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北部地区医師会病院長
高芝 潔 先生

高芝潔先生
P R O F I L E
山口大学医学部卒
昭和59年 済生会下関総合病院循環器内科医長
平成2 年 同循環器内科部長
平成3 年
北部地区医師会病院 循環器科
平成16年
北部地区医師会病院 院長

北部の医療事情に、もっと目を向けて下さるようお願いします。

この度は、本会会報に掲載するためのインタ ビューをお引き受け下さり、誠にありがとうご ざいます。

沖縄県における北部医療圏の実情は、救急医 療、産婦人科医療を始めとして、年々、難しい 状況になってきていると存じます。広報委員会 としましては、その現状を会員の先生方にも知 っていただくことで、北部医療圏における協力 体制、会員相互の協力並びに関係団体との連携 を密にして沖縄県内全体での医療・福祉の向上 を目指していく一助となればと考え、今回、高 芝先生へのインタビューを企画させていただき ました。

本日は宜しくお願い致します。

Q1.北部地区医師会病院は、昨年の1月に「地 域がん拠点病院」、8月に「地域医療支援病院」 に指定されたと存じます。それらの特徴をそれ ぞれお聞かせいただけますでしょうか。

本島の中で北部保健医療圏はがんの死亡率が 219.7(10万対)と中部や南部医療圏と比較し て約1.3倍の高さです。この理由は、北部は65 歳以上の老齢人口割合が19%を占める高齢地 域である事に加え、本島の約50%の面積に10 万人が暮らす過疎地域であり、がんに対応でき る病院が当院と県立北部病院の2つだけである 事等が挙げられると思います。当院のがん診療 を充実させる事で、北部のがん死亡率を下げた いと思っています。また、がんの急性期医療だけでなく緩和ケアも含めた全人的医療を目指し たいと思っています。

昨年8月に地域医療支援病院に指定されまし た。厚労省の目指す医療機能の分業化を進める 事は、医療の無駄を省く上で避けられない事だ と思います。当院は医師会が運営する病院のた め、会員の診療所の先生方との連携は比較的ス ムーズだと思っています。しかし、会員の先生 方の中には「かかりつけ医と中核病院の関係」 をはっきり理解していない方もおられます。病 院への紹介率がまだ80%に到達していないので 悩んでいます。また、患者さんも「かかりつけ 医」の意義がわかってない方が多く、逆紹介が 難しい事があります。今後も引き続き時間をか けて周知してもらうように努めたいと思います。 地域医療支援病院の指定を受けてから、一般の 外来通院患者は出来るだけ会員施設へ通院する ように紹介しております。指定前と比較すると 当院の外来患者は約15%減少しております。

Q2.産婦人科医の不足のため、県立北部病院 では産婦人科が休診となったと存じます。現在 の医療体制はどうでしょうか。ご苦労話や今後 の見通しなども含めてお聞かせいただけますで しょうか。

県立北部病院が産婦人科を休診してから1年 半が経ちました。この間北部には名護市内に産 婦人科医院が2施設だけとなりました。北部地 区の産科診療の実態は名護市内の2医院で低リ スク症例の出産を扱っています。それ以外の症 例は中南部の病院に紹介しています。産婦人科 救急症例に関しては県立中部病院に搬送してい ます。平成17年度は年間救急搬送数90件余で した。その中で病院到着前(救急車内)分娩が 数件ありました。現状はとても満足できません。

当院では8月に産婦人科医師1名を招聘して 準備をしており、11月から婦人科を開設しま す。引き続き医師を確保し体制を整え、なるべ く早い時期に産科を追加開設する予定です。

Q3.臨床研修制度が始まって3年目を迎え、各 地・各病院において後期研修に入った研修医が いますが、北部地区医師会病院における研修制 度の状況はいかがでしょうか。

これまでの取り組みに関する感想や今後の改 善点などをお聞かせいただけますでしょうか。

昨年よりRyuMICに参加して琉大の協力型研 修病院でありましたが、本年から管理型研修病 院の指定を受けて、現在2名の研修医が初期研 修を受けています。研修医が少ない事もあって 医局の先生達から可愛いがられているようで す。当院は医師数も33名と少なく、医局も1つ の部屋で医師達はいつも顔を合わせているので、診療科の垣根なく研修医は症例に応じて指 導を受けているようです。プライマリ・ケア症 例数の目安として昨年の救急車搬送件数を見て みると約1,200件、救急外来患者数は約6,000件 です。症例としては多くありませんが暫時増え ていけばと思っています。来年の募集研修医は 4名決定しております。後期研修は病院の充実 が先で今後の課題としています。

Q4.本会または日本医師会へのご意見・ご要 望などがありましたらお聞かせ下さい。

県医師会はもっと北部の医療事情に目を向け ていただきたいと思います。3大死因であるが ん、心疾患、脳卒中のいずれも死亡率は中南部 と比較してかなり高値です。乳幼児の死亡率も しかりです。沖縄本島内の医療格差を無くした いと思っています。北部医療の充実は県全体の 医療の充実を底上げします。我々と一緒にいろ んな事案を真剣に検討していただきたい。北部 地区医師会病院は沖縄県医師会の下部組織であ る地区医師会の運営する病院ですので、皆様の 知恵を拝借して実践していきたいと思っていま す。

Q5.先生の趣味や座右の銘などをお聞かせい ただけますか。

趣味は海で遊ぶ事でしょうか。大切に思う言 葉は「信頼」です。

本日は、お忙しい中、誠にありがとうござい ました。

インタビューアー:広報委員 比嘉敏夫