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平成18年度都道府県医師会
勤務医担当理事連絡協議会

常任理事 安里 哲好

会場風景

会場風景

去る11月13日(月)日本医師会館に於いて 標記連絡協議会が開催された。

鈴木常任理事より開会が宣言され、唐澤会長 より次のとおり挨拶があった。

「現在、日本の医療機関は厳しい状況にあ る。9月に安倍政権が発足し、これまで同様、 経済財政諮問会議が財務省のリードによる医療 費抑制政策を進めようとしている。株式会社に よる病院経営参入、混合診療の導入、保険免責 制などの市場原理主義による医療改革の目論み は医療の公平性を根底から覆すものであり、到 底容認出来るものではない。日本医師会では国 民皆保険制度、フリーアクセスなど日本の医療 制度の優れた部分まで変えようとする勢力とは 徹底的に戦っていく覚悟である。厳しい状況の 中、勤務医、開業医といっていると戦えない。 日本医師会が一致団結していくことが大切であ る。今期の日本医師会勤務医委員会で「第五次 医療法改正における勤務医の課題」を諮問して いる。医師不足や勤務医の過重労働の問題は基 本的な要因ではあるが、指摘されている診療科 目の偏在、地域偏在は若い世代の医師の意識変 化も理由のひとつと考えられる。医師養成の数 を増やすとすぐに解決できるという事ではな い。日本医師会としても深刻な問題として認識 し、勤務医委員会で検討をお願いし、大きな成 果を期待している。今回の協議会においても、 勤務医部会、勤務医活動等の問題だけではなく 幅広く討論頂き、各都道府県の貴重な意見をい ただきたい。」

議事

(1)全国医師会勤務医部会連絡協議会について

1)平成18年度報告 埼玉県医師会 谷本先生

埼玉県医師会より、去る11月4日、パレ スホテル大宮(埼玉県)において「勤務医 のアンガージュマンを求める」をメインテ ーマに標記協議会を開催し、340名の参加 があった旨報告があった。

2)平成19年度担当県医師会 沖縄県医師会 安里常任理事

来年度本県が当番県となっている。

期日は平成19年10月13日(土)、那覇市 の沖縄ハーバービューホテルに於いて「高 めよう勤務医の情熱、広げよう勤務医の未来」をメインテーマに開催すべく鋭意準備 を進めているので、全国各地より多数のご 参加をお願いしたいと挨拶した。

(2)都道府県医師会からの勤務医活動報告

1)宮城県医師会

宮城県では開業医も勤務医も同じ医師会 活動をするべきという理由から勤務医部会 は設立されていなかった。昨今の社会変化 に伴い、勤務医と開業医との立場が以前と 変わったことから、平成17年2月9日勤務 医連絡協議会を設立した。

これまでの活動内容としては、大規模災 害時における病院の連携を検証するため県 下に災害拠点ネットワークを設立し、非常 時の連絡網を約1年かけ整備し、無線と衛 星携帯を全ての災害拠点病院に設置し連絡 網を設置した。

また、今年8月に勤務医を対象とした医 師会入会についてのアンケート調査を実 施。それぞれ1医療機関から10名をランダ ムに選出し、100 名中82 名から回答を得 た。調査結果から「医師会は開業医の利益 保護団体である」との認識が85%を占め た。その考えを打破する為には、医師会の イメージチェンジと一般市民への広報が必 要であると考えている。また、既にテレビ のスポット広告などが始まっており、今後 その効果を期待したい。日本の医師の3分 の2を占める勤務医に医師会へ入会しても らい、勤務医の意見集約を発信する役目が 必要ではないかと思う。その為には非会員 の入会促進を図らなければならない。

また、勤務医から魅力ある医師会にする ためには、日本医師会が勤務医の為に活動 しているとのアピールが求められる。先日 埼玉でも話題となった勤務医の待遇を改善 する政策が必要ではないだろうか。

2)山梨県医師会

昭和36 年4 月に勤務医部会を創設したが、医師会の学術活動は山梨医学会が盛ん であったので、勤務医部会としての活動目 標が不明確となり、平成12年に廃止とな ったが、平成16年10月勤務医部会再建準 備会を開き、再建を決定した。この決定に 則り、山梨県医師会、官公立病院協議会、 市立病院協会、山梨大学医師会の4団体に 勤務医部会の理事の推薦を依頼し、平成 17年2月に第1回理事会を開催した。

同部会では、勤務医部会の規程を作成 し、山梨県下の勤務医の実態を把握すべ く、アンケート調査を二段階で実施。一つ 目は平成17年4月に勤務医を雇用する県内 の医療機関及び、山梨大学医学部管理者へ アンケート調査を実施。県内45の病院を含 む62施設及び、山梨大学臨床系19施設か ら回答を得た。二つ目は、当年6月に県内 の勤務医個人を対象とするアンケート調査 を実施し、508名の勤務医から回答を得た。

平成18年3月4日、第1回勤務医部会総 会を開催し、併せて勤務医に関するシンポ ジウムを開催した。県内の医療機関より女 性医師5名、男性医師7名を選出し、女性 医師の主張や、勤務医の現状並びに今後の 展望について講演を行なった。勤務医の参 加は満足できる数ではなかったが、新聞や テレビ等でも報道され勤務医活動の出発点 としての役目を果たせたと思う。また、病 院医療の現状を県民全般に訴え、理解と協 力を求めるため県民公開講座を平成19年3 月3日(土)に開催する予定で、現在準備 中である。

3)愛知県医師会

1987年に勤務医部会を設立し、31年の 歴史がある。

これまで勤務医部会は、基本的に院長や 副院長が出席する事が多く、病院経営や運 営等の話題が主となり、なかなか勤務医の 問題に辿りつかなかった。

今年度から病院医部会として、一般勤務医に参加頂き活動の場として位置づけてい る。昨今、勤務医不足の状況は勤務医部会 の活性化に繋がっている。具体的な活動と して女性医師に関するシンポジウムを開 き、女性医師の社会復帰のために活動を行 っているが、現在は一人も復帰していない。

また、勤務医師の確保対策とし、県が予 算を増加しドクターバンクを作ったが、絶 対数が足りないところで成果があがるはず がない。ドクターバンクへの登録も促進し ているが、絶対数が足りないので、機能し ていない。勤務医を組織化するためには、 日本医師会をはじめ、各都道府県医師会が 努力をしなければいけない。一方では勤務 医の組織化を訴えているが、一方では医師 不足を放置しているのは問題だと考えてい る。各県の執行部の意識を組織的に変える 必要があるかと思う。

4)長崎県医師会

長崎県医師会勤務医部会は昭和61年に 発足し、平成元年10月に第10回全国医師 会勤務医部会連絡協議会を開催した。ま た、平成18年度長崎県医師会勤務医部会 総会を開催し、女性勤務医の発言、女性医 師の動向についてディスカッションを行っ た。女性医師麻酔科復帰支援プロジェクト についてメディファクスと朝日新聞へ掲載 した。

(3)協議(意見交換)

T.医師の過重労働ついて<栃木県医師会>

過重労働について、栃木県医師会は今年 の1月に勤務医部会を発足し、三つの特別 委員会、勤務医と医師会のあり方委員会、 医療政策委員会、勤務医の過重労働委員会 を発足した。各特別委員会8名を含め審議 を行なう。

勤務医の過重労働については、厚労省か らの政策による事務処理の過多や、患者の 集中といった問題をどうやって解決したらいいのかという問題がある。解決策の一つ として、インフォームドコンセント、医療 機関の機能評価の書類作成時間、診療報酬 上の理解等別の形で補助金などがでないと 病院の経営を圧迫する可能性があるという 事を、厚生労働省へ要求してもいいのでは ないか。

もう一つの理由として、時間外労働の申 告、行政へ申告する事により過重労働に気 づいてもらう。勤務医の委員会を立ち上げ たが、勤務医の意見として討論しても行政 は動いてくれないという諦めがある。よっ て、各種委員会の集りに勤務医部会の会員 が参加する規程を定めた。日本医師会が意 見を行政へ届け、行動へ移してほしい。

石川県医師会:地域の患者さんの為に夜中 まで働いているのに、労働基準局から過重 労働違反と言われている現状に対して、日 医はどう思っているのか。

コメント

宝住副会長:労働基準法を守るという事が 必要であるが、労働基準法を守ると病院が 困る。患者がいるのに診察をしないという 事になってしまう。その事実を国民に発し て、国民の支持を得て労働基準法を守ると いう手立てを考えなければいけない。

鈴木常任理事:判断が困難である。委員会 として議論し、正しい判断を仰がなくては いけない。個人的な意見であるが、労働基 準法では医師は管理者か管理者でないかと いう事が大事になってくる。院長などの管 理者は、労働基準法の対象外である。一般 の勤務医の先生方を労働基準法に該当させ ていく事が正しいことであるか意見をいた だきたい。米国では医学を修得するため、 研修医は90時間の時間外労働が許可され ている。その反面、日本では40時間と決ま っている。国、職業によって見解は違ってくるという事をご理解いただきたい。国民 の常識、医師の不満を勤務医の立場で最低 限何が必要なのか意見をいただきたい。

高知県医師会:絶対数が足りないという事 を考えると、日本の医療は集約化してしま い、東京にしか集らなくなり、地方は潰れ てしまう。絶対数が足りないため、組織、 システムを構築しても数年で崩壊してしま う可能性がある。地域医療計画で産婦人科 の助産師、看護師、医師の労働時間は完全 な労働基準法違反となっている。そうでな ければ赤ん坊を助ける事ができない。その 実態をしっかり厚生労働省へ伝えてもらい たい。歯科では医師の監督下であれば助手 が処置する事が許されているが、産婦人科 は許可されないという矛盾が生じている。 今、改善のチャンスだと思うので、日本医 師会が国の矛盾点を示して改善してほしい。

静岡県医師会:労働基準法違反をする根本 的な理由は、絶対数が足りないので起こ る。勤務医を増やすために絶対数を増やさ なければならないという主張の捉え方で対 処するべきではないか。

U.会費について<福岡県医師会>

会員の入退会について医師会へ入会する メリットとは何か。高い会費を払うメリッ トがあるのか。しかし、医師会へ入会して もらわないと医師会がどういう団体なのか 知ってもらう事ができない。勤務医の意見 を医師会がすいあげて、何らかの力になれ るという事を知ってもらいたいので、医師 会へ入りやすくして欲しい。入退会の利便 性に関しても考えていただきたい。

茨城県医師会:研修医、大学院生も含め、 学会程度しかメリットがない。大学病院の 勤務医は他の勤務医と比べ給料が少ないと いう事もあり、学会費同様にしてほしいとの要望があるが改善されていない。日本医 師会も勤務医と開業医が一緒にやっていく には、会費の見直しが必要だと思う。

愛知県医師会:勤務医師会を作ろうとした きっかけは会費問題がある。勤務医を組織 化するのであれば会費を下げ、代議員数を 抑えるなどの工夫が必要ではないかと思 う。日本医師会が具体的な呼びかけをして ほしい。

千葉県医師会:勤務医の医師会への入会促 進のため、勤務医会で研修医交流会を計画 し、県と主催して開催した。我々が呼びか けを行なっても、院長までしか話が伝わら ず、研修医や勤務医までは伝わらない。勤 務医、指導医の先生方で何が一番問題なの かという事を知ることが難しい状況にあ る。医師不足の問題や臨床研修の問題は共 通認識だと考えている。会費を値下げし、 過重労働や研修医の問題で勤務医の数をど うにか増やす事ができるのではないか。

石川県医師会:会費が高いから入会しない という事ではないと思う。会費を安くして も会員は増えない。メリットがあるなしに 関わらず、医師は医師会へ入るべきだと思 う。医師会から会費額に見合ったサービス を受けているとは感じていない。会費に見 合ったサービスが必要であり、見合ったメ リットを日本医師会が全国の医師に示す必 要がある。

コメント

羽生田常任理事:今年度、全国の医師会へ 会費調査を実施した。同じ法人であるが他 の医師会へ異動する際、退会届を提出の上、 入会の申請を行わなければならないとの定 款がある。日本医師会では以前より各都道 府県郡市医師会の入会金等を揃えて欲しい との要望を出しているが統一は難しい。

統括:唐澤人会長

日本医師会の課題は勤務医の先生方に対 する政策をどの様に作り上げていくかだと 思う。過重労働、労働基準法の件は、ご指 摘のとおりであり、今後の課題として真剣 に取り組む所存である。

先生方からの色々な意見を聞き、しっか り医療政策を作り、戦略化していかなけれ ばならない。どんなに素晴らしい政策があ ろうとも、実力がなければどうにもならな い。展望のある未来を作っていきたいと思 うので、今後とも日医に対する信頼とご提 言を承りたい。

印象記

安里哲好

常任理事 安里 哲好

各県から勤務医の活動状況報告があった。宮城県は平成17年2月に勤務医連絡協議会を立ち上 げた。アンケートを行い、勤務医100名中82名から回答があった。その結果から、勤務医たちは 医師会の公益的活動の事をあまり知らないし、医師会は開業医の利益保護団体である(或いはそ う言われても仕方がないも含め)と感じている勤務医は85%で、一般市民と同じ考えであったと 報告している。医師会とは、より良い医療を目指す学術・公益団体として活動しているが開業医 の利益をもたらす団体であって、医師全体の代表ではないと見られている。その誤解を解くため には、医師会のイメージチェンジと一般市民への広報活動が必要であると述べていた。

山梨県医師会は昭和36年4月に勤務医部会を設立したが、勤務医全体を巻き込む活動に成功し ないまま平成12年に廃止になった。医療は個人で行う時代からチームを組んで実践する時代へと、 言い換えれば、開業医中心の医療から病院医療へ重心が移行しており、現在医師の7割は病院勤 務であり、医療費の7割が病院で消費されている。今後は勤務医に積極的に働きかけ、勤務医と 医師会で力を合わせ医療人としての職能機能を果たすべく、お互い協力して進めていく以外進む 道は無いと考え、平成16年10月再建を決定したとの事。その後、アンケートやシンポジウムそし て病院医療の現状を県民全体に訴えて、理解と協力を求めるため県民公開講座を開催する予定と の事。

協議においては、「医師の過重労働について」、「会費について」の熱気あふれる意見交換がなさ れた。

沖縄県医師会は平成18年8月現在会員2,167名中1,422名(66.5%)が勤務医で、組織率は全国 で鳥取県(67.3%)についで2位であった。医師会報(2006.3号、勤務医の活動と実態について) に掲載された勤務医との座談会での発言の中に、他府県と同様な意見が多くあった事を記憶して いる。勤務医部会の担当理事は大学病院と大病院の院長が担当しているが、勤務医の意見を充分 に反映されているか危惧するところであり、勤務医の代表に担当理事の一人を充当するか新たに 理事の席を増やしたらどうかと理事会で提案したところである。

来年度の全国医師会勤務医部会連絡協議会の開催は当県で、メインテーマは「高めよう勤務医 の情熱、広げよう勤務医の未来」、シンポジウムは「病院の機能分化について〜勤務医の現状をふ まえて〜」、その他3講演を予定しており、沖縄から全国へ発信できる会にしたい。