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九州医師会連合会平成18年度第1回各種協議会

3.地域医療対策協議会

副会長 玉城 信光

去る9月30日(土)大分県において、みだし 協議会が開催されたので報告する。

協議会開始にあたり、担当県の阿南大分県医 師会副会長より次のとおり挨拶があった。

日医より今村定臣常任理事、今村聡常任理事 にご出席いただきました。医療界全体が非常に 厳しい状況におかれている中、地域医療につい ても難問山積であり議論を尽くせないものがあ るかと思います。以前より本協議会は活発な議 論がなされておりますが、本日もより有意義な 議論ができるようお願いしたい。

続いて、日本医師会今村定臣常任理事、今村 聡常任理事より次のとおり挨拶があった。

【今村定臣常任理事挨拶】

先生方のご推薦により4月より日医で仕事さ せていただいている。本日の協議会の提案議題 を見ますと難問が多くありご苦労のことと思い ます。地域医療の担当ではないが、先生方のご 意見・ご提言を承って日医総研での研究でお役 に立てていきたいと考えております。

【今村聡常任理事挨拶】

4 月より日医常任理事をさせていただいてお ります。地域医療は、内田常任理事が主担当で 私は副担当ではありますが、標準的な保健指導 プログラムに関してはワーキンググループに参 加している。十分な回答はできないかも知れま せんが、皆様方のご意見・ご要望については、 きちんと日医に持ち帰り検討していきたい。

続いて、大分県医師会の半澤副会長の進行に より協議に入った。

協議では、各県より提案された10題の提案議題を、T.次期医療計画について、U.中小 病院について、V.老人医療についての3項目 に分けて行われた。提案要旨・問題点を要約し たレジメ(事前に配布)を参考にして、提案県 からの追加説明を行い、検討・協議が行われ た。また、それぞれの議題について日医の今村 (聡)常任理事ならびに今村(定)常任理事よ りコメントをいただいた。

以下、協議内容。

T.次期医療計画について

下記5題の提案及び回答があった。

提案要旨

(1)次期医療計画の見直しについて (福岡県)

次期計画では、事業項目ごとの医療連携体制 の構築や数値目標の設定がおこなわれることに なっているが、如何に実効性のあるものにする かが重要である。各県の取り組み状況はどうな っているか。

(2)第6次医療法改正における基準病 床数の取扱いについて(佐賀県)

次期医療法改正では病床種別を「急性期」 「一般」「有診」「療養」等に区分し、種別毎に 基準病床数を定める方向での検討が予想され る。今後、各県毎に設定される政管健保の保険 料率の決定にも大きな影響が危惧される。ま た、平成19年より有床診療所の基準病床数に カウントされる。各県の対応と日医の対応方針 はどうなっているか。

【各県回答】

次期医療計画については、各県とも各県医療 審議会・保健医療協議会・医療計画策定委員 会への参加や行政との勉強会・意見交換を開催 するなど、医師会と十分に連絡を取り合うこと について県行政と確認している。また、県医師 会内及び地区医師会内に連携推進委員会を設置 し協議検討を始めている県もある。

特に、今回の改正は、新しく医療計画に盛り 込まれる指標(主要疾病の入院日数・地域連携 クリティカルパスの普及目的等)、健診・保健 指導の実施率などの数値目標設定など地域医療 の推進に与える影響が大きい。また、健康増進 計画・介護保険事業支援計画とともに、医療費 適正化計画との整合性を持って行うことになっ ており、いずれの計画にも都道府県医師会は積 極的に参加する必要があるとの意見が多く出さ れた。

また、熊本県では、本年8月〜 11月にかけて 全国6 〜 7箇所の自治体単位でのモデルで実施 される「地域ケア整備構想(仮称)」のモデル 事業に参加を了承している。

九州は医療提供体制の完成度の高いブロック である。2年間非常に重要な時期を迎える。し っかりとした取組みが必要(座長)

(3)地域における救急医療の取り組み について(熊本県)

【提案要旨】

基幹病院の医師確保困難。診療科によっては 常勤医不在も見られる。医師確保も含め連携が スムーズに行っている地域の意見を聞きたい。

【各県回答】

医師会・大学・開業医が専門医会、輪番病院 等との連携を図り工夫しているが対応できない 地域が出てきているなど、救急医療体制の確保 に苦慮している状況であるとの回答が多く出さ れた。特に小児科医不足から小児救急が最も困 難な状況であるとのことであった。

沖縄県からは、県立病院・市立病院・民間病 院等が取り組んでおり、ある程度整備されてい るが、小児救急に関しては救急病院の小児科医 が疲弊するような夜間診療所的状態がおきてお り今後の課題となっていること、休日等は医師 会員が数日分担していることなどを回答した。

(4)標準的な健診・保健指導プログラ ム(暫定版)について(福岡県)

【提案要旨】

厚労省提示の標準的な健診・保健指導プログ ラムでは今までの地域医師会が行ってきた保健 活動は否定されかねないため、基本的に賛同で きない。

各県での対応と日医の対応策はどうなっているか。

【各県回答】

早急に積極的な取り組みを行う必要があると の意見が多く出された。「保険者協議会」や 「地域・職域連携推進協議会」等に参加して、 医師会がこれまで行ってきた健診事業への取り 組みを踏まえて意見を述べていきたいとの意見 が出された。

(5)かかりつけ医について(福岡県)

【提案要旨】

次期医療計画見直しなどにおいて「かかりつ け医」は益々重要。本年4 月より「新かかりつ け医宣言」を開始している。今後、官僚主導の 「かかりつけ医」が出てくる可能性有るが、日 医の対応策はどうなっているか。

【各県回答】

専門性が特徴のわが国の診療体制のなかで 「かかりつけ医」はますます重要になってくる 等の意見があった。

本会からは、かかりつけ医の基本は病診連 携・診診連携が上手に出来ることが基本で、さ らに医療の進歩に追いついていかなければなら ないので日医の生涯教育講座への参加を義務付 けることが必要と回答した。

・厚労省が有床診療所の療養病床の転換を勧め ているが、数日前に補助金の締め切りなので すぐに提出するように言ってきた。厚労省が そういうので市に申し込んだら市担当にだめ だと言われた。行政が混乱している(宮崎 県・福岡県)。

【今村(聡)常任理事コメント(1 〜 5 につい て)】

・各県医師会は、医療計画だけに関わるのでは なく、全体の中でよく把握し対応が必要であ る。医療計画・健康増進計画・介護保険事業 支援計画の3 計画は、医療費適正化計画との 整合性、医療費適正化計画と相互に整合する こととなっている。都道府県によって違うと 思うが、有能な人材をそこに配置していると ころもある。

・今の有床診療所のベットが将来的にどうなっ ていくのか、日医より2 人の委員が出ている。 質問の具体的なことについては、まだ出てい ない。

・健診事業が大きく変わったのは、医療費適正 化により医療費を減らすために厚生労働省が 考えたことによる。電子化とは言っている が、オンライン化とは言っていない。

公衆衛生上のデータが今まで無かった。

間違った方向に行ってしまう危険性ある。 これまで、医師会と町村国保とどういう連携 を取っていたかに影響される。市町村も国か ら急に言われていることで困惑しているよう であり、医師会の協力なくしてはできないと 言ってきているので、医師会は、市町村・県 と調整を図っていただきたい。

日医も、医師会でないと保健指導は難しい と主張していく。

・国がかかりつけ医とはこれであると行ってく る可能性ある。かかりつけ医という言葉が独 り歩きしている。是非、日医で全国共通のも のを作りたい。

・DPC については、日医は特定機能病院でと 主張している。

【今村(定)常任理事コメント(2 について)】

・日医も先生方の不安共有している。公式の見 解は出していないが、DPC に移動するのは、 国立・高度医療機関に限った方がよいとの 内々の感想を持っている。

なお、宮崎県・福岡県から質問のあった有床診療所の療養病床への転換のための補助金につ いては、国と市町村は往々にしてあることだ が、今始めて聞いた」として、持ち帰り検討し てもらうこととなった。

U.中小病院について

下記3題の提案があった。

(6)民間の200 床以下の中小病院の存 続の見通しについて。特に一般病床 (急性期)の未来はあるのか。 (佐賀県)

【提案要旨】

厚労省の急性期病床削減計画により多数の民 間病院は閉鎖に追い込まれる。

将来的に外科系医局を目指す医師が少なくな ることでのマンパワー不足で地域医療は崩壊の 危機。各県及び日医の考えを伺いたい。

【各県回答】

外科系は若者に人気が無くマイナーな科であ り対応が急務である。若い医師は都会志向、大 病院志向であり、県単位・九州単位での問題と しては解決難しく、今後の日本の医療提供体制 の構築を全国的な問題として捉えるべき等の意 見があった。

国は、DPC をやらないと急性期だめだとい う可能性を孕んでいる。

本会からは、中小病院の生き残る道は有床診 療所も同じであるが、特化した医療を進めるこ とであり、若き力のある外科医に思い切り仕事 をしてもらう方法を取るべきと回答した。

(7)医師の偏在化(地域別・診療科 別)の問題について−有効な対策は あるのか−(長崎県)

【提案要旨】

毎年3,000 〜 4,000 人の医師の実質増にも関 わらず、地域別或いは診療科別に医師の偏在化 が社会問題となっており、地域医療崩壊の危機 である。喫緊の問題として有効な対策はない か。各県の意見・日医の取り組みはどうか。

【各県回答】

診療科・地域による格差が大きく社会的な問 題である。医学部定員枠を増やす、地域枠を設 ける、研修医を確保する等、各県医師会とも県 行政や大学と調整を図っていると回答があった。

本会からは、麻酔科医・外科医の派遣が上手 く行っている例として、離島勤務のあとの待遇 をよくすることや、離島勤務前に手術ができる よう事前に研修を行うことなどにより、ほとん どの勤務医師が離島勤務に満足していることを 紹介した。また、産婦人科や脳外科など医師数 の少ない科ではまだ問題が多く、現在解決策を 探っていると説明した。

【今村(定)常任理事コメント(6〜7について)】

・妙案なかなかない。一律の給与ではなくて負 担がかかっている外科系などに給与の差を持 たせれば(ハイリターン)労働に耐えられる と思う。そういうことも検討していく。

・厚生労働省も日医も医師確保は重点政策であ ると考えており、各種アンケート調査で検討 している。その中でも産婦人科の医師確保に ついては、日医総研でもPT を作って検討し ている。

【今村(聡)常任理事コメント(6〜7について)】

・日医地域医療委員会で協議しており、11 月 初旬までには考えを纏める。診療科・地域の 偏在ある。重点化・集約化も一つの考えでは あるが、あくまでも都道府県の中で都道府県 医師会が中心となって調整を図り、それでも だめなら国がやる。最終的な責任は国が責任 を持って対応していかなくてはならない。

・日医の委員会で検討している。女医が働きや すい環境をつくっているところもあると伺っ ている。待遇改善が必要。

(8)看護職員の需給問題(特に看護師、 准看護師確保の困難性)について (長崎県)

【提案要旨】

7:1の看護配置基準が認められ、公的病院 や大病院の看護師の増員を図っている。地方に まで触手が伸びている。看護職員の確保に有効な手立てはないか。

【各県回答】

関東・関西の大学病院・大病院の看護師募集 が展開され、地元大学病院でも看護学校めぐり をするなど看護師獲得に奔走していると現状の 説明があった(鹿児島県)。特定機能病院の認 可のために7:1基準をとるため看護師多数の 募集が行われており、これでは地域医療の崩壊 に繋がってしまう。

各県において、看護職の定着・確保対策が行 われており、県内就業促進・離職防止・潜在看 護婦の掘り起こし・看護職員養成・ナースセン ター事業など取り組まれている。

医師会看護学校においては、県外流出が8 割 にも及んでいる県もあり、コースの廃止なども 検討されている。また、補助金を出してくれる よう行政と交渉している県もある。

本会からは、那覇市医師会の看護学校准看コ ースに受験する社会人が増えている現象がある ことを紹介した。

【今村(聡)常任理事コメント(8について)】

・重要な問題である。厚生労働省の第6次看護 需給計画は実態と違う。実態をよく調査し、 把握する。

V.老人医療について

(9)老人医療会としての、早目の対応 の必要性について(話題提供) (長崎県)

【提案要旨(話題提供として)】

老人医療費が各県とも全国レベルより高い が、今後、ペナルティの可能性有り。九州各県 で足並みを揃えた対応策の必要性があるのでは ないか。

地域による医療格差の出現が憂慮される。

【各県回答】

足並みをそろえた早急な対策が必要と回答し た県もあった。

本会からは、後期高齢者の老人医療保険制度 を別枠で作成する予定としているので、この推 移を見極めながら検討してはどうかと回答した。

(10)後期高齢者医療広域連合の設立 準備委員会の設置状況について (鹿児島県)

【提案要旨】

後期高齢者医療制度では都道府県単位で全ての 市町村加入の広域連合が財政運営の主体になる。 各県での設立準備委員会の進捗状況はどうか。

【各県回答】

各県とも設置済みとの回答もあり。

協議の終了に当たって、今村(定)常任理事 から、先生方の提言・要望等聞いて、日医で対 応できていないものは持ち帰って検討していき たい。また、日医総研で出来ること、調査して 欲しいことがあれば是非あげていただきたいと 発言があった。

印象記

玉城信光

副会長 玉城 信光

平成18 年9 月30 日大分県で開催された。揺れるJR 九州に乗り二度目の大分入りである。 会に先立ち大分県医師会館の見学に行った。健診センターを併設した立派な会館であった。 大会議室など日本医師会館を少し小さくした規模である。補助金がたくさん出ており、理事 者の個人の机など執務室もある。とても沖縄県医師会では真似の出来ることではない。

会議は16 : 00 スタートである。阿南大分県医師会副会長より挨拶があり、日医より今村 定臣常任理事、今村聡常任理事に出席いただき協議会が始まった。詳細は別頁報告を参照し ていただきたい。

協議内容は3 題で、1.医療計画、2.中小病院の存続、3.老人医療についてである。

1.医療計画

次期医療計画については各県とも療養病床の再編や有床診療所のベッドカウントなど必要 病床数が検討されることになるが九州各県とも病床過剰状態にあり、今後、医師会として行 政と積極的にかかわることが必要であると確認された。

福岡県から今後かかりつけ医が重要になるので、福岡県はかかりつけ医宣言を開始したと 報告があった。たいへん印象的であったので下記に記す。

「新かかりつけ医」宣言

1)自己の専門性も含めプライマリ・ケアに努めます。その際、患者さんの生活背景を把握し、 全人的に接するよう努力します。

2)自己の範疇を超えるケースに対しては、的確な病院と他の診療所、あるいは診療所同士の 連携を駆使し問題解決に当たるように努めます。

3)医療の継続性を重視します。

4)健康相談、学校医、産業医、各種検診の協力など社会的活動、行政活動には積極的に参加 します。

5)保健・介護・福祉関係者との連携に努めます。

6)地域の一員として地域住民との信頼関係構築に努めます。

7)地域の高齢障害者が少しでも長く地域で生活できるよう在宅医療に理解を示します。

8)右記を達成するため、日常の研修に積極的に参加するよう努めます。

2.中小病院の存続

医師の偏在や看護職員の不足などが取り上げられたが、各県抱える事情は異なり基本的に は各県の対応策を考えることが大切である。沖縄県の医師確保対策事業の経過を説明した。 国の第6 次看護需給計画は実態と異なるので日医は実態を調査し厚労省に申し入れたいと今 村(聡)常任理事は答えた。

3.老人医療

後期高齢者医療広域連合の設立準備委員会の設置状況が報告された。各県とも設置されて おり今後内容の検討がなされる。医師会の役割が期待されるところである。

協議会参加者は以前から地域医療の役割を担っているようで継続的な議論になっている。 初参加の私にはまだ制度の面で理解不足があり、今後の課題が見えてきた。

お知らせ

「第62回沖縄県医師会定例総会」開催のお知らせ

下記の日程で開催いたしますので、会員多数のご参加をお願い致します。

会 期:平成18年12月9日(土)14:00〜
会 場:パシフィックホテル沖縄(万座の間)

報 告

  • 1)平成17年度沖縄県医師会会務について
  • 2)平成17年度沖縄県医師会一般会計・諸特別会計収支決算について
  • 3)代議員会決議事項について

議 事

  • 1)沖縄県医師会館建設用地等価交換について