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第50回九州ブロック学校保健・学校医大会並びに
平成18年度九州学校検診協議会

理事 野原 薫

会場風景

会場風景

去る7月29日(土)、30日(日)の両日、ホ テルニュー長崎において開催された「第50回九 州ブロック学校保健・学校医大会並びに平成 18年度九州学校検診協議会」について下記の とおり報告する。

7月29日(土)

【九州学校検診協議会幹事会】

平成17年度の事業報告並びに平成18年度の 事業計画について報告が行われた後、1)九州各 県における学校管理下の心臓性突然死(平成 16・17年度)について、2)ブルガタ型心電図 の判定基準とその取り扱いについて、3)昨年度 の九州各県からの暫定診断名集計結果につい て、4)養護教諭へのアンケート集計経過につい て、の計4題について協議が行われた。

【九州各県医師会学校保健担当理事者会】

1)鹿児島県医師会で作成した「発達障害への 対応マニュアル」のご提示と各県の発達障害者 (児)への支援現状について(鹿児島県)、2)学 校・地域保健連携推進事業の次年度以降の運営 について(鹿児島県)、3)小学校・中学校での 内科検診のあり方について(鹿児島県)、4)学 校におけるAEDの設置状況と今後の展望につ いて(沖縄県)、の計4題について協議が行われ るとともに、日本医師会常任理事の内田健夫先 生より中央の情勢についてご報告された。

幹事会、担当理事者会の終了後、19時より 懇親会が催され、九州各県医師会より多くの先 生方がご参会された。

7月30日(日)

【平成18年度九州学校検診協議会】

心臓部門、腎臓部門、小児生活習慣病部門の 3部門による教育講演が行われた。

心臓部門では、独立行政法人国立病院機構長 崎医療センター心臓血管外科医長の濱脇正好先 生より、先天性心疾患術後の生活管理につい て、術後に生じうる不整脈と肺高血圧症に対す る管理方法を中心に講演が行われた。

腎臓部門では、長崎市民病院副院長・小児科 診療部長の冨増邦夫先生より、学校検尿におけ る緊急システムについて講演が行われ、緊急シ ステムの緊急性についてはあまり重要視してい ないが、システムをより理想的に機能させるに は不可欠である。また養護教諭との連携は最も 重要であると説明された。

小児生活習慣病部門では、福岡市立こども病 院・感染症センター医療主幹の河野斉先生よ り、学校検尿と糖尿病について講演が行われ、 学校検尿で見つけられた小児のIGTに対するフ ォローの必要性を強調するとともに、子供の生 活習慣病対策という面で尿糖検査を考える場 合、食後尿糖を検査する方法が有効である可能 性も考えられると説明された。

教育講演と並行して「学校医大会分科会」が 開催され、眼科部門では、川崎医療福祉大学感 覚矯正学科教授の田淵昭雄先生より「眼科学校 保健の問題点について」講演が行われ、耳鼻咽 喉科部門では、神田耳鼻咽喉科ent クリニッ ク・長崎ベルヒアリングセンター院長の神田幸 彦先生より「人工内耳装用児の学校進路状況− 術前の療育方法による検討−」について講演が 行われた。各分科会では講演の後フリーディス カッションが行われた。

【九州医師会連合会学校医会評議員会】

平成17年度の事業並びに決算の報告が行わ れるとともに平成18年度の事業計画並びに予 算について説明があった。また次回、次々回に おける担当県についても協議が行われ、次回に 宮崎県医師会が決定し、次々回に熊本県医師会 が内定した。

【九州医師会連合会学校医会総会】

井石長崎県医師会長、唐澤日本医師会長(代 読)他の来賓祝辞が述べられ、秦宮崎県医師会 長から次回担当県医師会長挨拶が述べられた。 (次回は平成19年8月5日(日)宮崎市にて開催)

総会終了後、「すこやかな心と体をもつ子供の ために」をメインテーマに基調講演が行われた。

基調講演Tでは、神奈川県警友会けいゆう病 院小児科部長の菅谷憲夫先生より「小児のイン フルエンザ対策」と題し講演が行われ、最近で は小児の死亡が減少しており、その理由とし て、ワクチン接種率の向上と、抗インフルエン ザ薬の普及が考えられると説明があり、今後、 ワクチン接種を公費負担にする、乳幼児や高齢 者のいる家庭は家族全員の接種を行う、ワクチ ン接種量を再検討する、ということを求めたい と強調された。

基調講演Uでは、活水女子大学健康生活学部 教授の永田耕司先生から「学校医としての児 童・生徒・保護者へのメンタルヘルス相談につ いて」と題し講演が行われ、思春期は「心のア ンテナが高い時期」であり、ちょっとしたこと で気になったり体の不調を訴えたりと、心身の 不調を自覚しやすいと説明があり、学校現場で は相談の多い内容を踏まえ、ICD10による分類 に基づき、障害ごとに分けた解説が行われた。

印象記

野原薫

理事 野原 薫

去った7月に長崎県で開催されました上記大会に、宮城信雄会長、心臓部門専門委員我那覇仁 先生、腎臓部門専門委員粟田久多佳先生、小児生活習慣病部門専門委員太田孝男先生、事務局、 そして私の総勢8名で参加してきました。

初日は九州学校検診協議会幹事会があり、平成17年度事業報告及び平成18年度事業計画が報告 された後、心臓部門、腎臓部門、小児生活病部門それぞれの協議事項が話し合われました。その 後、九州各県学校保健担当理事者会(先月号で報告済み)、懇親会がありました。二日目の午前は 学校検診協議会で、三部門の教育講演、学校医大会分科会として眼科部門、耳鼻咽喉科部門の教 育講演がありました。午後は基調講演T.「小児のインフルエンザ対策」、U.「学校医としての児 童・生徒・保護者へのメンタルヘルス相談について」がありました。

今回の大会で最も期待した講演は、けいゆう病院小児科の菅谷憲夫先生の「小児のインフルエ ンザ対策」でしたが、特に目新しい対策はありませんでした。菅谷先生は従来からインフルエン ザ予防接種を小児のインフルエンザ対策の柱として掲げておられますが、現状のような効果では 困難かと思われました。また、インフルエンザ治療におけるタミフル投与では3〜4日間でも十分 な効果が得られていること、タミフル投与の効果はA型インフルエンザよりB型インフルエンザで は劣ることなど、一般臨床医が実感していることをデータにして報告しておりました。

この大会に出席し始めて5回目になりますが、学校保健に熱心なごく一部の会員のみが参加し ており、内容も専門化、細分化され、現状の学校医活動とのギャップを感じます。より多くの会 員や学校長、養護教諭などの学校関係者も参加するような、また明日からの学校医活動に役立つ ような基礎的な知識を身につけるような大会になるよう希望したいと思いました。