沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 11月号

前のページ | 目次 | 次のページへ

平成18年度第2回都道府県医師会長協議会

宮城信雄

会長 宮城 信雄

会場風景

会場風景

みだし会長協議会が去る9月19日(火)午後 3時から日本医師会館(3階小講堂)で開催さ れた。

定刻になり司会の羽生田常任理事より開会の 辞があり、会長挨拶に先立ち来年大阪で開催さ れる第27回日本医学会総会への協力要請のため 出席した岸本忠三会頭(大阪大学前総長)より、 同総会の会期、会場並びにプログラム等につい て説明があり参加・登録の協力依頼があった。

続いて会長挨拶に移り、唐澤会長から概ね次 のとおり挨拶があった。

「この度の台風13号により、特に沖縄、九州 地域で多くの被害が出たことについてお見舞い 申しあげると共に一刻も早い復興をお祈り申し あげる。岸本会頭から説明のあった第27回日本 医学会総会は、21世紀2回目の医学会総会とし てテーマも「生命と医学の原点−いのち・ひ と・夢−」と題して開催される。日医を揚げて 協力体制を組んでいるので来年4月には多数の 方のご参加をお願いしたい。政局はいよいよ、 明日自民党の総裁選挙が行われ、恐らく26日 には新しい総理が誕生し新内閣が発足すると考 えている。未だはっきりした医療政策、社会保 障政策に対する具体策が見えていない。今まで と同様な政策が続くと考えており、手綱を緩め ずきちんと対応していくことにしているのでご 支援ご指導賜りたい。」

引き続いて各県より提案された議題について 協議が行われたので概要について報告する。

協 議

(1)勤務医の日本医師会入会促進につ いて(山口県)

【提案要旨】

最近の大きな社会問題になっている医師不 足・偏在は極論すれば病院勤務医の不足・偏在 にほかならない。医師確保対策は即ち勤務医対 策と考えるべき観点から、日本医師会として具 体的な戦略、また勤務医の入会促進についての お考えをお伺いしたい。

山口県では転勤の多い若い勤務医について、 医師免許取得後の一定期間、低額の県内統一会 費(入会金なし)で、県内いずれの郡市医師会 にも容易に入会でき、県医師会会員である限り 県内での移動に伴う手続きを簡素化する方向で 検討を進めている。

ついては、日医は勤務医が郡市区医師会を異 動した場合、入・退会の手続きが必要とされて いるが、これを変更し、都道府県医師会会員の 資格が継続されていればこの手続きを踏まず に、異動手続きだけで済むよう検討していただ きたい。

【羽生田常任理事回答】

日医としても勤務医の入会促進に努めていく ことにしており、今年度下記事業に取り組んで いくことにしている。

1)女性医師バンク委託事業の展開

2)産科の「分娩に関連する脳性麻痺に対する障 害補償制度」の創設への取り組み

3)研修医の会費引き下げ

現行の会費年額61,000円(医師賠償責任 保険含む)を40,000円に引き下げることにし ており、改正案を10月に開催する日医代議 員会へ上程する予定。

C会員資格の手続きについて

現在、会員の地区医師会間の手続きは 「入・退会の手続き」を取っているが、山口県より提案された「異動手続き」処理につい て、日医も可能だと思われるので検討してい きたい。

ただ、郡市医師会もそれぞれ独立した社団 法人で理事会の議を経て処理することになる が、医師賠償責任保険との関係上、異動する 場合には空白期間が生じないよう、オリエン テーションを行い入会していただくようお願 いしたい。

(2)日本と外国の医療費及び療養費の 比較資料の作成について(沖縄県)

【提案要旨】

日本医師会が国民の信頼を得るためには、国 民に対し我が国の医療の現状について、わかり やすいメッセージを発信し、理解を求めていく ことが最も重要である。

ついては、日医総研において、米国をはじめ とする諸外国と我が国との医療費の比較、例え ば、各種疾患毎の治療単価、本邦の療養病棟と 米国でいうナーシングホームの入院・入所費用 等を調査・分析して、その違いを国民に分りや すい形で取り纏め、国会議員へ直接提示すると 共に、各種メディアを通して国民に周知してい ただきたい。

質問する宮城会長

【今村定臣常任理事回答】

我が国の医療の現状あるいは当面する課題に ついて分かり易く要望を発信し国民の理解を得 ることは、日医にとって広報活動の最も重要なことである。医療費の国際比較はマクロ的に行 うOECDヘルスデータと医療費の対GDP比較 があるが、疾患ごとの治療費等一連の費用を比 較する場合には、各国の医療制度の仕組みとの 違いをしっかり考慮して行う必要がある。

日医総研では米国の公的保険であるメディケ アを中心とした医療費の調査分析を行ってい る。近く中間報告をまとめホームページに掲載 すると共に、ワーキングペーパーにまとめて国 会議員、メディアにも伝えることにしている。 (朝日新聞への「医政に市場原理を導入した ら」:データは日医総研が提供)

【宮城会長追加発言】

そういうデータがいろいろ出ているのは会員 も良く知っていると思う。ただ、厚生労働省が 言っている宣伝に負けて、医療費抑制は当然だ という流れを何とか食い止めて反転攻勢に出て いただきたい。そのためには広報活動日医総研 の資料作成、調査は非常に大事になってくるの で、是非そういうところを進めていただきたい。


※(3)と(4)は一括協議

(3)標準的な健診・保健指導プログラ ムの問題点について(石川県)

【提案要旨(抜粋)】

医療制度改革大綱、ならびに医療制度改革関 連法案の成立に伴い、平成20年から医療保険 者に対し、40歳以上の被保険者・被扶養者を 対象とする、内臓脂肪型肥満に着目した健診及 び保健指導の事業実施と健診結果に関するデー タ管理が義務づけられることとなった。

これに伴い、厚生労働省は標準的な健診・保 健指導プログラム(暫定版)を明らかにした が、このなかで保健指導に関する知識・技術を 有することが必須であることから、既存の資格 (日本医師会認定健康スポーツ医など)の見直 しが指摘されている。

プログラム構築までの限られた時間のなか で、医師・医師会が中心となって地域住民の健 康を増進させる真に効率的システム作りが喫緊の課題である。保健指導対象者がシームレスに 地域医療を受けられるようにするために医師・ 医師会が執るべき具体的な方策について、日本 医師会のお考えをお聞きしたい。

【当日の追加質問事項】

1)精度管理の問題が出てくるが、保健指導の技 術者については健康スポーツ医を必ず置くこ とにしてはどうか。

2)選定簡素化の基準については、介護保険事業 と同様に認定審査会を設置し医師の参加の義 務付けができないか。

3)既に医療を受けている方については、主治医 の信頼関係と健康に関するデータを生かすこ とができないか。

(4)健診・保健指導について(福岡県)

【提案要旨】

平成20年度から開始される特定健診・特定 保健指導について、厚生労働省では実施できる 保険者については平成19年度より開催すると言 っている。医師会は医療と保健の分断を招かな い為にも、今回の健診・保健指導を医師会が委 託を受け、積極的に関わる必要があると考え る。医師会あるいは各医療機関で、今回のプロ グラムに示されているような健診及び十分な保 健指導ができるような体制作りや施設の共同利 用を検討する必要があり、早期に本事業につい ての研修やプログラムについて検討をお願いし たい。


※(3)と(4)の回答

【内田常任理事回答】

今回の健診・保健指導については医師及び医 師会の役割が最も大きいところであるが、一方 で医師会外しという動きも明らかになってい る。適切な健診・保健指導の実施は医師の関わ りがあって始めてその成果をあげることができ ると考えている。医療を要する対象者は勿論、 保健指導の必要な対象者に関してもかかりつけ 医をはじめとする医師が関与することが重要 で、そのことは健康・運動指導士のところでも「医師・かかりつけ医と連携する」と記載され ている。

保険者とのかかわりでは、健診・保健指導の 取り組みが適切に行うためにも、又、精度管理 も含めて医師会との関わりが重要になってくる と思う。保険者に対する第三者による監視評価 が必要であり、その働きかけを行っているとこ ろである。

一方、医師会に対してもこの業務に関するス キルアップが求められており、12月に運動、栄 養指導に関して担当者指導講習会を開催するこ とにしている。この講習会を受けて地域医療の 研修という形で取り組んでいただきたい。1年 後のスタートを控え、未だ財源、レセプトデー タとの突合の問題、アウトソーシング、精度管 理の重要な問題が山積しており、現場の意見を 大事にしながら取り組みを進めていきたい。

(5)「分娩に関連する脳性麻痺に対する 障害保障制度」について(新潟県)

【提案要旨】

1)8月25日、自民党厚生労働部会に提示された 厚労省の予算要求では「本制度について検討 を継続中」とあり、是非予算化の交渉に期待 したいが、その見通しは如何か。

2)基金総額を年間60 億円と試算しているが、 その根拠を教えていただきたい。

3)財源についての日医の見解、具体案をお聞き したい。

【木下常任理事回答】

1)検討を継続中というのは、必ずしも来年度予算 に載せないということではなく、現在、川崎厚 生労働大臣から直接具体化するようにとの指示 があり、自民党の政務調査会でも説明してお り、今年中に何とか具体化していきたい。

2)分娩に関連した脳性麻痺の中で、特に重症で ある第1級と第2級に絞っている。特に重症 なケースを選んだのは医師賠償責任保険に上 っているものも考慮して100 万人に対して250人の重症脳性麻痺として試算した。事務 経費10%を入れて、55〜60億円あれば基金 は運営できると考えている。

3)財源は、一般会計から個別の案件について出 すことは難しいとされており、分娩育児一時 金に上乗せしていただくことも含めて厚生労 働省と交渉中である。

(6)医師の適正配置について(岐阜県)

【提案要旨】

昨今、山間僻地の医療機関において、医師の 不足が原因で、一部の診療科の連鎖が相次ぎ、 地方の医療が深刻な状況になってきている。こ の「医師不足」の問題は、平成16年から始ま った新しい「研修制度」が大きな要因となってい ることに疑う余地はない。

医師の数は決して少なくはない。医師が都会、 大病院に集中していることが問題なのである。 山間地を含む「医師の適正配置」が全国的にな されれば、問題は解決への一歩を踏み出すこと となる。即ち、卒業した医師は、研修期間を終 了した後ある一定期間、又、或る条件の下で、 地方の医療機関に勤務することを法的に義務づ ける事が「医師不足」を解決する極めて有効な 手段ではないかと思われる。これを期するため 日本医師会も大きな関心を持って、法案成立の ために尽力することを願っている次第である。

【内田常任理事回答】

地域医療の崩壊に直面する現状において、医 師偏在の問題は当面する喫緊の課題と考えてい る。行政から今後の対応について8月に発表が あったが、これでは不十分と考えている。現 在、日医でも各方面から現状、地域対策に関す る情報収集を進めており、9月末には意見集約 できるものと考えている。ご提案の立法化の件 も含め医師の適正配置、病院医師の確保策、勤 務医のスキルアップの方策等を含め実効性のあ る提言を取り纏めていきたいと考えている。

(7)医療資源の集約化・重点化と病院 の拠点化ついて(秋田県)

【提案要旨】

国の通知により診療科(小児科、産科)の集 約化・重点化が推進されている。また、疾患分 野においては「がん診療連携拠点病院」が指定 され、そして厚労省は2007年の予算で各都道 府県に「肝疾患診療連携拠点病院(仮称)」を 整備する方針を示した。

小児科の集約化・重点化では小児医療が完結 するエリアを圏域とし、公立病院を中心に10人 以上の小児科医(新生児医療を含める場合は 15人以上)を配置する「連携強化病院」の設置 が示されており、今年度末を目途にその実施の 適否を決定したうえで具体策を取り纏めること となっている。

若干の問題点を挙げると、一つは対象とする 圏域の人口動態や面積など地理的特性と住民の 受療行動にマッチするかであり、もう一つはこ の集約化・重点化は全国一律に強制的に実施す るものではなく医師確保が困難な地域における 緊急避難的な措置とされ、各県や各地域独自の 創意工夫も促進且つ尊重されるべきことである。

また、疾患分野における拠点病院の指定で は、病院のランク付けとなる懸念や診療報酬上 の問題が指摘されている。医療資源の集約化・ 重点化や病院の拠点化は今後他にも講じられて くる可能性があり、検討されるべき課題である ことを意見として述べる。

【今村聡常任理事回答】

医療資源、集約化について日本医師会は緊急 避難的措置であって、あくまで選択肢の一つと いう考え方である。都道府県にノルマを押し付 けるような集約化・重点化の進め方には反対で 地域独自の創意工夫が尊重されるべきで、その 採用に関しては地域の医師会が中心になって決 めるべきものである。公立病院を中心とした小 児科医の人数についてもあくまでも目安と考え ている。疾病ごとの拠点病院の整理については 今後も続くと考えているが、肝疾患の治療連携拠点病院についても、これから検討会が設置さ れることになる。拠点病院というのは連携の構 築を目指すべきものであって病院のランク付け であるとか診療報酬上の問題でないことを従来 どおり主張していきたい。

(8)医療費通知と個人情報保護につい て(鳥取県)

【提案要旨】

医療費通知では、被保険者(被扶養者を含 む)の受診年月日、受診者名、医療機関名、医 療費等の内容を通知している。最近、医療費通 知により親が子どもに詰問したり、叱責した り、場合によっては直接産婦人科へ照会するケ ースが散見されるようである。この医療費通知 は、医師と患者の信頼関係を損なう要因ともな り情報保護の観点からも好ましくなく、実施に よる効果よりも損失の方が大きく、あまり意味 がないように思われる。

この医療費通知に関して合法的なものなの か。個人情報の保護との整合性、あるいは産婦 人科のケースでどのように対応したらよいのか。 日本医師会のご見解ご教授をお願いしたい。

【今村定臣常任理事回答】

医療費通知については、個人情報の適切な取 り扱いのためのガイドライン及び平成17年3月 に作成された事例集で考え方が示されている。

医療費通知を世帯ごとに纏めて送付すること については、家族同士であっても異なる個人で あることから、原則として被保険者とその家族 にそれぞれ通知することが望ましい。送付方法 は同じ封筒に入れてもそれぞれに密閉した葉書 であれば差し支えない。但し、予め被保険者と その扶養家族それぞれの同意があれば纏めて通 知することは差し支えない。その同意は個別的 に取得しなくても包括的に各被保険者及び被扶 養者宛に医療費通知を家族に纏めて送付するこ と、仮に同意しない場合には、申し出てもらう ことを通知して了承を得れば良いということが 示されており、それに則り通知すれば個人情報保護法には抵触しないものと思われる。

親から医療機関へ問い合わせがあった場合 は、原則として家族といえども第三者として取 り扱い、本人の同意を得てから回答すべきと考 える。

(9)世界保健機関(WHO)次期事務局 長立候補支援について(日医)

尾身茂WHO西太平洋事務局長がWHO事務 局長に立候補され、来る11月に選挙が行われ る。尾身先生は業績を含めて世界的にも評価が 高い。今回13名の方が立候補しており、日医 としても尾身氏の活動を支援することに理事会 でも決定した。ついては、医師会としても資金 面での協力を行うことになり、都道府県医師会 に対して支援金の協力をお願いしたいとの提案 があり了承された。

その他

・保健師助産師看護師法違反容疑によ る警察の家宅捜査に断固抗議する (茨城県医師会)

神奈川県警生活経済課による保健師助産師看 護師法違反容疑で、警察官60名にもおよぶ家 宅捜査が実施されたことに対し、茨城県医師会 より神奈川県産婦人科医会の見解も含めて、提 出した抗議文への支援要請があった。

【木下常任理事回答】

昭和29年5万人いた助産師が平成14年には2万5千人に減らされている。助産師がいない診 療所で医師が分娩介助を行い4〜5万件の分娩 を行っている。こういう背景の中で助産師がい ないところで看護師の診療の補助としての内診 について家宅捜査したことについては、医師会 としても不当であるとの話をした。しかしなが ら病院における状況が分らない部分もあり、今 後の対応については検討していきたい。

<第27回日本医学会総会日程>

―メインテーマ―
生命と医療の原点 ―いのち・ひと・夢―

学術講演 2007年4月6日(金)〜4月8日(日) 3日間

大阪国際会議場・リーガロイヤルホテル・ホテルニューオータニ大阪

学術展示 「いのち・ひと・夢 MedicalExhibition 2007〜みんなで考える医学と医療〜」

2007年4月5日(木) 〜4月8日(日)4日間 大阪国際会議場

企画展示 「いのち・ひと・夢 EXPO2007〜みんなで考える医学と医療〜」

2007年3月31日(土)〜4月8日(日)9日間

大阪城ホール・大阪ビジネスパーク(OBP)ほか

前のページ | 目次 | 次のページへ