常任理事 真栄田 篤彦
平成18年7月29日(土)大阪府医師会館で開 催されたので、以下に報告する。
日医会長唐澤祥人日医会長の開会の挨拶、酒 井國男大阪府医師会長の挨拶のあと、日医の男 女共同参画委員会委員長の保坂シゲリ先生から 下記のような報告があった。
「各都道府県での女性医師に関わる問題につい ての取り組み状況および日医各委員会での女性 の登用状況について」
女性医師に関わる問題についての取り組み状 況は様々であるが、12都道府県医師会が委員会 や部会をすでに設置、11府県医師会が設置予定。 委員会や部会の設置はしていないが、勤務医部 会の中で取り組んでいる所が6医師会あった。
女性医師の増加に伴い、社会と各医師会の考 え方は急速に変化している。
九州では、大分県、宮崎県、鹿児島県が設置 している。沖縄県では、設置も設置予定もいま だ無しとの報告をしている。
今期、日医会内委員会での女性登用が進んで いるとのこと。
ついで、以下にパネルディスカッション「女性 医師バンクに関する諸問題」について報告する。
日医常任理事 羽生田 俊
厚生労働省は、平成18年度より女性医師バ ンクを中心とした医師再就業支援事業を実施す ることになっており、その委託先を含めて検討 している。
日医では、職業紹介事業の許可申請に向けて 準備を開始したところである。本年度中の医師 再就業支援事業の立ち上げを目指しているとこ ろである。
千葉県医師会理事 秋葉則子
千葉県医師会に女性医師部会は平成17年 12月3日に設立。現在110名余の会員あり。
部会のアンケート調査によると、出産、育 児、介護等のために第一線で活躍していた環境 を一時的にせよ断念せざるをえない状況にな り、さて職場復帰をと思っても、日進月歩の医 学の現場に戻ることの困難さに直面している。
育児支援事業、職場復帰のための研修の場を 強く求める声が多かった。
初年度の事業計画では女性医師の働く環境整 備とドクターバンク事業をかかげた。ドクター バンク事業は、法律上の手続きの煩雑さ、時間 がかかるなどの難問が多く、営利事業として多 くの業者がすでに事業を展開している。
ホームページを開設し、そこで求人・求職の 書き込みを行い、職場復帰を希望している女性 医師の研修機関も考慮し、短期のパートや、自 分にあった時間内での仕事が相互の利に合って いれば、お互いに交渉を開始していく。
勤務医部会の事業計画にも女性医師の復帰に 協力できる研修機関を広く求め、県行政側での ドクターバンク事業の委員としても参加し、各 方面と歩調を合わせて、取り組んでいく。
<指定発言>ドクターバンク
徳島県医師会における取り組み
徳島県医師会理事 櫻井 えつ
徳島県医師会では行政とタイアップした「ド クターバンク」がある。
徳島大学・徳島県・徳島県医師会(女性医師 部会)の三者連携によるシステムを立ち上げた。
医療機関には当直免除・時間外勤務の免除、 ワークシェアリング・フレックスタイム制・専 門性を活かす部門の就業(専門職パート)の勤 務形態の導入の可否を質問。
女性医師には、就業を妨げる要因、希望する 就業継続支援・復職支援対策を質問。これらの アンケート結果、既設のドクターバンク内に女 性医師(復職)支援部門の窓口を設置。徳島大 学がE ラーニング形式による(復職)教育研修 システムを導入、徳島県がこれらの事業を支援 する体制が整った。
大阪大学大学院医学系研究科小児科
助手 恵谷 ゆり
2004年日本小児科医学会の調査で、小児科 勤務医の28%が女性医師。
特に20歳代では44%、30歳代では33%と非 常に大きな割合を占めている。
厚生労働省での調査によると、小児科女性医 師の47%が求職したことがあるとのこと。
再研修制度の不備や就業緩和措置がない、保 育施設が不十分などの理由で、復職が困難なケ ースが多い。
今回開設した「小児科医バンク」では、育児 中や介護中などの制約のある女医でも求職しや すいよう、託児所の有無や急な欠勤時のバック アップの有無などのきめの細かい情報提供を行 っている。
個人情報保護の問題で、当面は医療機関から の求人情報のみをホームページ上で公開し、そ れを閲覧した個々の女医が直接交渉によって雇 用契約を結ぶ方式で行っている。
本年4月から大阪地区で試験運用を始めたと ころ、現段階で約15件の求人情報があり、その 内1件で雇用が成立している。
東京女子医科大学第一生理学教授
川上 順子
女性医師の占める割合は年々著しい伸び率を 示してきた。その一方、女性医師には出産、子 育て、配偶者の転勤などで、臨床現場を遠ざか り、再雇用される機会が減少する問題点がある。
臨床の場を離れた女性医師の再教育には講義 や研修会だけでなく、実地の臨床体験が必須で ある。しかし、研修を希望する女性医師を取り 巻く環境は個々で異なり、研修条件は一律には 決めることができない。
オーダーメイドで研修先を探すことが出来れ ば、再就職の可能性も高くなる。
大学病院だけではなく、地域の病院とネット ワークを構築して、これらの病院でも専門臨床 研修が可能となるような再研修センターを下記 の2つを提案する。
国立病院機構大阪医療センター統括
診療部長 山崎 麻美
平成16年から「ママさん医師登録システム」 に取り組んでいる。
育児等の諸事情によって在宅を余儀なくされ ている女性医師に可能な限り合わせた多様な勤 務形態を導入し、近畿ブロックの病院とのマッ チングを行うシステム。
女性医師が離職し、復職し難い要因には、職 場の物理的な環境や制度の問題、上司・同僚の 認識、夫を中心とした家族の環境、女性医師自 身の仕事や家庭、子育てに関する考え方などの 問題点がある。
大阪医療センターでは、就労形態の柔軟化・離職している女性医師の復職を支援する為に、 再就職支援研修コースの設定、二十四時間保育 や病児保育などの育児支援・院内設備の改善な どに取り組んでいる。
基調講演 「次世代育成支援と男女共同参画」
〜職場・家庭・地域における希望を実現するために〜
内閣府特命担当大臣
(少子化・男女共同参画)猪口 邦子
平成16年12月末現在、わが国の医師に占め る女性割合は16.4%であり、年々着実に増加し ている。
年齢別に見ても、60歳代の8.1%に比較し、 29歳以下が35.3%と若い世代で女性医師の割 合が高くなっている。
平成17年12月閣議決定された「男女共同参 画基本計画(第2次)」において、新たな取り組 みを必要とする分野として、科学技術分野を盛 り込み、女性医師の仕事と出産・育児等の両立 支援策に取り組むことを明記した。
妊娠・出産期における女性の健康支援のた め、周産期医療の充実を図ることを重要施策と して位置づけ、産科医・小児科医の確保対策を 進めることとした。
両科とも女性の医師割合が比較的高い診療科 である。さらに、産科・小児科の医療システム の充実は、安心して出産でき、喜びを感じなが ら子育てができる少子化対策としても重要であ ることから、この程、決定した「新しい少子化 対策について」の中でも推進することを明記し ており、政府として積極的に取り組んでまいる 所存である。
1.男女共同参画社会基本法
(平成11年6月23日公布・施行)
同基本法は全28条からなる。
2.GEM(ジェンダー・エンパワーメント指数)の国際比較
日本は80カ国中43位ときわめて低位であり、 先進国中最下位。多くの途上国よりも低くなっ ている。
GEM の定義:女性が政治及び経済活動に参 加し、意思決定に参加できるかどうかを測るも の。具体的には、国会議員に占める女性割合、 専門職・技術職に占める女性割合、管理職に占 めている女性割合及び男女の推定所得を用いて 算出している。
3.各分野における女性の参画状況
しかし、日医役員の女性割合は0%である。
4.第2次男女共同参画費本計画のポイント
5.医師関係の基本計画
<生涯を通じた女性の健康支援>
妊娠・出産時に関する健康支援
<新たな取り組みを必要とする分野における男 女共同参画の推進>
科学技術(研究者の医師を含む)
6.新しい少子化対策について
2006年6月20日、少子化対策に関する政 府・与党協議会での合意。「骨太方針2006」 に盛り込み、強力に推進。
合計特殊出生率1.25、出生数106万人(初 の人口自然減2万人)
出生率の低下傾向を反転させる。少子化対 策の抜本的な拡充、転換を図る。
7.新しい少子化対策(医師関係)
1)子育て支援
1)新生児・乳幼児期(妊娠・出産から乳幼児期まで)
地域における産科医療機能の集約化や 重点化、周産期医療のネットワークの構 築等、産科医等の確保・産科医療の提供体制の充実に努めるほか、女性医師等の 仕事と育児両立支援や再就職支援等に努 める。
2)未就学期(小学入学前まで)
地域における小児科医療機能の集約化 や重点化等、小児科医の確保に努めるほ か、女性医師の仕事と育児の両立支援や 再就職支援等に努める。さらに、小児救 急医療の態勢整備を進める。
2)働き方の改革
8.男女共同参画社会の将来像
多様な価値観の下、個性を生かし、共に生き る社会へ
新しい視点が提起され、様々な人の立場 を考慮した政策の立案・実施が可能になる。
職場:男性にとっても働きやすい職場環境 が確保され、多様性に富んだ職場環 境が人々を活性化することを通じて 企業活動も活発となる。
家庭:男女とも、子どもと関わる喜びを体 験し得る。
地域社会:職場中心の生き方だけでなく、 地域活動、ボランティア、学習 活動等、選択肢が拡大する。
国際社会におけるジェンダーの平等と女 性のエンパワーメントに向けた連携を進 め、その取り組みを発信することで、国内 外における男女の生活が真に向上する。
印象記
常任理事 真栄田 篤彦
初めて「男女共同参画」に関するフォーラムに参加してきたが、会場内には女性医師が多く参 加しており、質疑応答も活発になされて、時間が超過気味であり、猪口邦子大臣も帰路の時間が 差し迫り、質問を中座せざるをえない況であった。次年度も開催するとのことで閉会した。
沖縄県内でも勤務医を中心に女性医師のグループが存在しているとのことなので、その先生方 と連絡をとって、県医師会としても、男女共同参画を推進することに協力していきたいと考えて いる。
是非、女性会員の各種委員会への参画を希望している。