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九州各県医師会学校保健担当理事者会

理事 野原 薫

会場風景

会場風景

去る7月29日(土)ホテルニュー長崎におい て、標記会議が開催されたので、その概要につ いて報告する。

挨拶

井石会長より、大会開催等についてご協力い ただき感謝申し上げる旨、挨拶があった。

内田日医常任理事より、概ね次のとおり挨拶 があった。

担当は、学校保健、地域医療、公衆衛生と、 いずれも医療の現場に関わりが深い。先生方の お声を日医に届けていただいき、それに的確に 対応していきたいと考える。よろしくお願いし たい。

座長選出

慣例により、担当県の井石会長が担当し、以 下の事項について協議が行われた。

協議

1)鹿児島県医師会で作成した「発達障 害への対応マニュアル」のご提示と 各県の発達障害者(児)への支援現 状について(鹿児島県)

【提案要旨】

本県では、今年2月に児童総合相談センター 内に発達障害者支援センターが設置され、本会 からも行政当局に強く要望していた行政主導の 運営が開始されました。

また、本会でも発達障害児への理解と対応を 啓発するため、「発達障害への対応マニュアル」 と題した、会員向けの小冊子を作成致しました ので、参考までに提示します。

昨年11月に開催された担当理事者会でも各 県の状況についてお伺いしたところであります が、新たな取組み等がございましたら、ご教示 下さい。

【各県回答】

沖縄県では、発達障害者支援センターは現時 点では設置されておらず、本年10月に県より外 部団体に委託する形で設置が予定されている。

沖縄県を除く九州各県の状況は、鹿児島県、 長崎県では行政が当センターを運営する形で、 その他の県では社会福祉法人等が委託される形 で運営が行われていると報告された。

また、九州各県医師会における発達障害への 取り組み等については、鹿児島県、熊本県で は、発達障害児への理解と対応を啓発すること を目的にマニュアルを作成しており(鹿児島県 は会員向け、熊本県は学校並びに関係者向け)、 宮崎県、佐賀県、大分県、福岡県、長崎県で は、発達障害に関する研修会を開催または予定 しているとの報告であった。

【内田日医常任理事】

発達障害については、早期に発見し適切な対 応を行うことで社会適用がスムーズに行えると いうケースレポートも出ていることから、早期 発見が非常に重要であり、そのためには、学校 関係者、保護者並びに学校医への啓発周知が大 切である。

また、各県より、発達障害に対応可能な専門 家(医)が少ない状況について、現在の医療保 険体制では対応が難しいと考えられるため、日 医から厚生労働省等に積極的に提言していただ きたいと意見があった。

上記のことについて内田日医常任理事より、 専門家が非常に少ない状況については認識して おり、今後厚労省等に対し専門家並びにコーデ ィネータの育成について積極的に提言していき たいと回答された。また、発達障害については ごく最近より浮上してきた問題であり、各県の 持つケースレポートを共有化し、それを参考す ることで適切な対応をお願いしたいと付け加え られた。

2)学校・地域保健連携推進事業の次年 度以降の運営について(鹿児島県)

【提案要旨】

ご承知のとおり、平成16年度から実施してい る標記事業は、3年間のモデル事業となってお ります。次年度以降の運営について、県教育委 員会へ確認したところ予算措置など全く未定と のことでした。

各県で今後の運営等について、方向性が決ま っておりましたらご教示下さい。また、日本医 師会が文部科学省に対し、強く働きかけを行っ た結果実現した事業とお伺いしています。次年 度以降の方向性が決まっていたら、ご教示下さ い。未定であれば、継続事業として強く働きか けていただければ幸いです。

【各県回答】

沖縄県では、平成16年度より当事業に取り 組んでおり、今年度は精神科医の学校派遣事 業、精神科医・産婦人科医による電話相談事業 を行っている。当事業の継続については、沖縄 県教育委員会に問い合わせたところ、未定では あるが文科省は事業継続に理解を示していると のことであった。

各県においても当事業が積極的に行われ、学 校関係者からの評価も高く、継続を希望したい との意見であった。

【内田日医常任理事】

先日、文科省と話し合いを行ったところ、当 事業に対する評価は高く、現時点では確定して いないが、次年度も当事業に対する予算が確保 される方向である。

3)小学校・中学校での内科健診のあり 方について(鹿児島県)

【提案要旨】

本県の地元紙(南日本新聞)に、下記のよう な投書が掲載されました。

「内科検診では肌着を脱がなくても良いので はないか?思春期の女生徒にとっては恥ずかしいので、配慮して欲しい」という内容です。

肌着を脱いでもらい検診を行うことは、いじ めや虐待の早期発見という意味もあるかと思い ますが、いかがでしょうか。

校医の考え方にもよるのではないかと思われ ますが、各県の対応状況をお聞かせ下さい。

【各県回答】

各県ともに、学校健診のあり方については 侃々諤々の議論が行われているが、未だ確立し た健診方法は無く、それぞれの学校医の判断に 任しているとの報告であった。

また各県より、学校健診に際し、健診の主旨 を学校関係者並びに保護者に、より理解しても らう必要があると意見された。

【内田日医常任理事】

医師の立場で考えれば上半身裸での健診が望 ましく、また、学校関係者並びに保護者への教 育は必要であると考えるが、コンセンサスを得 ることは難しいと思われる。

4)学校におけるAEDの設置状況と今後 の展望について(沖縄県)

【提案要旨】

現在、公共の施設や学校等にAED を設置し、 突然の心停止が起こった際は救急車を待つこと なく、身近にいる一般市民(学校教諭等)が AEDを用いた蘇生処置により心停止者を救命 する体制整備が全国で進められております。

本県では、平成18年3月31日現在で750校 (県立小、中、高等学校)中、1校にAED が配 置され、平成18年度中に22校が設置予定とさ れております。

つきましては、各県における学校へのAED 設置状況並びに講習会開催等の取り組み状況に ついてご教示いただきたい。

【各県回答】

各県ともに、県立学校等へのAED 設置は進 められているとの回答であった。また、AEDを 設置するだけでなく、AEDの使用方法等につ いての講習会も積極的に行われていると報告さ れた。

「中央情勢について」

内田日医常任理事より、中央情勢等について 概ね次のとおり報告された。

医療費適正化や医療提供体制の効率化という 二つの大きな柱を中心に、医療法、健保法関連 の改正が6月に施行された。

この中には、療養病床の削減、介護療養病床 の廃止という非常に大きな問題や、高齢者医療 制度の創設、有床診療所の48時間規定の廃止 も含まれている。有床診療所については、有床 診療所の病床が新たに医療計画で定める基準病 床にカウントされることで、病床過剰地域では 有床診の新規開設が原則として認められなくな るが、都道府県知事が僻地医療や在宅医療の充 実に不可欠と判断した場合には、特例的に開設 を認める制度を設ける方向で進められている。

また、医療機関に対し、都道府県を通じた情 報提供を義務づけることが今回の医療法改正案 に規定された。ただ提供する内容については、 どこまで踏む込むかということはこれからの検 討課題となっている。併せて、医療機関が広告 を行える範囲が広げられる旨が盛り込まれてお り、この内容についても適正な情報提供になる よう、今後、厚労省の中で検討されていくこと になっている。

その他にも、在宅かかりつけ医の課題、医師 偏在の問題、社会医療法人制度の問題等が挙げ られる。

更に、医療費適正化の流れとして、健診・保 健指導の保険者の義務化も謳われている。これ により、保険者が適切なデータを集め健診受診 率を向上させ、生活習慣病を中心に患者を 25%減らし、2015年までには2兆円の医療費を 削減するということであるが、保険者に健診の データとレセプトのデータが全て集まることに なり、これらのデータを突合し医療現場に介入 しかねないという非常に大きな問題も孕んでい る。また、健診のアウトソーシングが可能とな っており、業者間のダンピングや質の確保等の 問題も挙げられる。これらのことについては、 都道府県医師会あるいは郡市区医師会で非常に 大きな問題となってくると思われるので、今後 の対応等について早急に検討していただく必要 があると考えている。日医では来る8月31日に 日医会館で説明会を開催するとともに、都道府 県にアンケートを出させていただき、現場が混 乱しないよう、また医療が後退しないような形 での方向性を打ち立てていかなければならない と考えている。

次に出てきたのが、歳出改革に関するプロジ ェクトチームによる歳出削減ということで、社 会保障給付費では1.1兆円(国庫ベース、地方 を合わせると1.6兆円)の削減が盛り込まれて いる。これについても、これ以上削減すると医 療が後退するだけの話であり、医師会としては 絶対に認められない立場であることから、でき るだけ実際の現場に影響しない形での落としど ころを見つけていきたい。歳出削減に際し具体 的に挙げられたことが、一つ目が保険免責の問 題、二つ目が混合診療範囲の見直し、三つ目が 高齢者医療費負担の一割負担から二割負担、四 つ目が薬剤費の見直しということであった。こ れらについては、歳出改革プログラムに盛り込 む医療分野の検討課題から具体的な記述を削除 していただいたので、すぐにこれが出てくるこ とはないと思うが、今後も油断することなく対 応していきたいと考える。

次に、規制改革・民間開放推進会議の中間答 申案の中で、専門医制度を含めた医師資格制度 の見直しや、保険医の再登録制が出されてい る。これは平成18年度検討結論の平成19年度 措置とされているが、このことについても専門 家団体である医師会での対応を主張していきた いと考えるが、7月31日に中間報告が出される ことになっているので、対応が少し遅れたと認 識している。

最後に、日本医師会では、2015年を将来構 想に定めたグランドデザインを、来年7月を目 処に策定する。今回の特徴は財源論まで明言し ており、今後も先生方のご意見を参考にしなが ら進めていきたい。

竹嶋日医副会長より、中央情勢等について概 ね次のとおり報告された。

新執行部が誕生し4ヶ月が経った。これまで は唐沢執行部誕生の際にお約束させていただい た、国政に対し我々の政策の反映させるための ルートづくり、また、医療の現場のからの声を 日医総研をフルに活用し政策をつくることに全 精力を費やしてきた。広報にも力を入れ、毎 週、メディファクス等に対し定例の記者会見を 行っている。国政は、メディファクスから医療 情報を得ているので、今後も続けていきたいと 考えている。

また、5年後、10年後をしっかりと見据えた グランドデザインの策定についても2週間に一 度日医総研との会議を行っており、来年3月に は全体のまとめを出したいと考えている。

これからは、地に足をつけ、じっくり構えて 取り組んでいきたい。

今村日医常任理事より、中央情勢等について 概ね次のとおり報告された。

川崎厚労大臣より、日医からの要望について は複数の項目を是非実現したいとのことである ので、最優先の要望項目として無過失の賠償責 任制度を挙げている。

母子保健に関する事項として、開業助産所に おける産科の嘱託医師の確保並びに産科の連携 病院を定めることが付帯決議に盛り込まれた。 また、出産育児に関わる手当についても、現 在、出産費用は利用者がいったん自己負担した 上で、出産後の1ヶ月後に償還払いされていた が、今後は、保険者が医療機関に直接支払うこ とによって、利用者の手元に現金がなくても出 産できる給付手続きに変更される。これは産科 費用に関わる未収金の問題についてもある程度 の目処がついたと考えている。

印象記

野原薫

理事 野原 薫

今回の協議事項は4題ありました。

1.発達障害児への各県の支援状況について ですが、ほとんどの県では県が主体となって発達障害 児支援センターが設置されています。沖縄県ではやっと今年10月頃に設置予定で、運営は外部委 託を行う方針ですが、事業内容は未定です。また、今年3月に沖縄県学校保健・学校医大会で「発 達障害児への対応」の講演会を行いました。

現在、どの県でも発達障害児へ対応できる専門医が足りなく、支援センターの設置だけではな く、今後、国レベルで専門医を養成する必要があると感じました。

2.学校・地域保健連携推進事業については、これまで3年間の期間限定で、文部科学省の事業と して行ってきており、学校現場からは高い評価を得ていますが、どの県も次年度以降は予算次第 となっています。現在、沖縄県では精神科医の学校派遣、精神科医・産婦人科医の電話相談事業 を行っています。

3.小・中学校での内科検診のあり方についてですが、日本学校保健会の健康診断マニュアルで は、特に留意すべき疾患として脊柱湾曲及び運動器発育異常、アレルギー並びに伝染性皮膚疾患、 結核、腎疾患、心疾患、貧血、喘息、リウマチ性疾患、伝染性疾患などあり、これらの疾患の正 しい検診法は上半身の下着を外して行うのが望ましいと記載されています。最近各県でも女生徒 及び保護者からのクレームがあり、対応に困っているようですが、各県の意見はバラバラで、ま とまりませんでした。日本医師会常任理事の内田先生からは現場でのコンセンサス、社会的コン センサスを得た上で行うのが望ましいとのコメントを頂きました。結論としては学校検診の意義 を児童生徒、保護者及び学校関係者に周知するとともに、現場の学校医と養護教諭が検診方法に ついて話し合って行うということだと思います。

4.沖縄県宮古地区医師会からの提案で学校におけるAEDの設置状況と今後の展望についてです が、各県ともAEDの設置は一部のみで、多くはこれから設置する予定でした。また、AEDの設 置に伴い、各県医師会とも学校関係者を対象にAED講習会も行う予定となっており、沖縄県でも 講習会の準備を検討することにしました。

九州各県医師会学校保健担当理事者会は定期的に年2回開催されており、各県からの提案事項 を協議しております。学校医の先生方で学校保健に関するご質問、ご要望がございましたら、各 地区医師会学校保健担当理事又は私までお願いいたします。