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第102回沖縄県医師会医学会総会会頭挨拶

又吉正哲

第102回沖縄県医師会医学会総会会頭 又吉 正哲

この度、第102回沖縄県医師会医学会総会会 頭を仰せつかりました又吉正哲でございます。 歴史と伝統のある本医学会総会においてご挨拶 を申し上げることをまことに光栄に存じており ます。

今、わが国の医療はめまぐるしく変わりつつ あります。私などは日進月歩の医学の発展に伴 って出てくる新しい知識と医療技術を認識し理 解していくことに追われております。更に、医 療に対する国民の要求レベルの高まりと国民の 高齢化に伴う経済的規制の両面から苦しい運営 を迫られております。

勿論、本学会の主目的は学問、技術の向上を 目指すものではありますが、色々なディスカッ ションの中で、このような社会的問題に触れざ るを得ないこともあろうかと思います。

平成16年度から医師の臨床研修が制度化さ れました。大学の医局等では医局員の減少で出 先の病院等への医師の派遣にも支障が出始めて いると聞いております。又、卒後臨床研修で小 児科、産婦人科、外科などの現場でその多忙さ にふれて若い医師の診療科目の選択に偏在が起 りつつあるのではないかとも言われています。 またこれらの診療科に多い訴訟も見逃せない要 素であります。更に女性医師の増加も著しく 諸々の条件から多忙な科目の選択が困難な情況 が生じ易くなっていると思われます。

さて、今まで我々の医学は感染症をほぼ制圧 出来たと思われていました。しかし最近では結 核症に増加の傾向が見られたり、AIDS、SARS 等の困難な感染症にも直面しています。また新 型インフルエンザ、なかでも鳥インフルエンザ『H5N1』の人への感染も見られ、その流行の可 能性も否定できません。

一方、我々の生活習慣に起因する軽度な危険 因子が累積した病態であるメタボリックシンド ロームが注目されています。これは心血管疾患 を起こしやすい病状であります。本県ではこの 発生頻度が高く男性では長寿県としての沖縄県 の地位を失うこととなりました。県医学会もこ の問題に懸命に取り組まなければなりません。

沖縄の伝統的食生活を分析しそこから今の時 代にふさわしい新しい食生活方法を考案し確立 していくことが望まれます。

去る4月3日に県立南部医療センター・こど も医療センターが開院しました。今までにない 新しい構想で本県の医療の重要な役割を担って いくもので、先端医療、救急医療特に子供の救 急医療に力が注がれることに大きな期待が高ま っております。

さて、本学会の特別講演は奈良県立医科大学 学長吉田修先生による『いま、医師にもとめら れるもの』というテーマであります。高度化、 細分化された医学と優れた医療技術をもって複 雑化した日本社会で医師はどのように考え、如 何にして最良の医療managementを行っていく べきかについて貴重なお話を伺えるものと思い ます。

最後に第102回沖縄県医師会医学会総会の運 営に当たられる沖縄県医師会医学会長比嘉實先 生、沖縄県医師会長宮城信雄先生及び関係各位 に心から感謝を申し上げて私の挨拶とさせてい ただきます。