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沖縄県立南部医療センター・
こども医療センター院長 安次嶺 馨 先生

安次嶺馨
P R O F I L E
昭和17年
沖縄県那覇市に生まれる
昭和36年 那覇高等学校卒業
昭和42年 鳥取大学医学部卒業
昭和44年〜46年 沖縄県立中部病院研修医
昭和46年〜49年
シカゴ市マイケル・リース病院小児科 研修医
昭和50年 沖縄県立中部病院小児科医長
平成8 年 同病院副院長
平成15年 同病院院長
平成16年 沖縄県立那覇病院院長
平成18年 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター院長
現在 ハワイ大学医学部小児科臨床教授
米国小児科専門医
日本小児科学会評議員
日本未熟児新生児学会理事
日本小児救急医学会理事
日本周産期新生児学会評議員
日本小児保健学会評議員
沖縄県小児保健協会理事
専門分野 新生児学、小児科学
趣味 写真(蝶)、音楽鑑賞

沖縄から全国に発信できる医療を行います。

約束の時間より早く医療センターへ到着した ので、院内を見学することができた。広く吹き 抜けの待合はすばらしく、センターの担う医療 に対する期待が大きくなる感じがした。

放射線科を訪れ、かつての同僚に案内しても らった。最新のCT装置、これから稼動する予定 の放射線治療装置などを見せていただき、医療 センターの進もうとしている道筋が見えてきた。

インタビューアー:広報担当副会長玉城 信光

1.救急医療について

玉城:先生こんにちは。大変すばらしい施設を 見せていただきました。あまりに広すぎて職員 も道に迷うと言っていました。

これだけ素敵な病院だと患者さんもよろこん で来院すると思います。医療センターの開設か ら2ヶ月になりましたが、現況はいかがですか。

安次嶺:2ヶ月経ち、ようやく、病院の機能が 落ち着いてきました。新病院には多くの新しい 職員が増え、また他の県立病院からの異動もあ り、チームワークを築くのに時間がかかりまし たが、職員は予想以上に新病院に適応してくれ ました。

新しい病院の電子カルテシステムのトラブル も次第に回数が減ってきています。6ヶ月ほど するとフル稼働できるのではないかと思ってい ます。

現在外来患者が1日350〜450名ほどです。救 急が70〜130名ほど、病床稼働率が70%です。

玉城:小児の救急が殺到して先生方が疲弊して いるようなお話も聞きましたが、いかがです か。これだけきれいな病院だとこちらに来たく なる気持ちもわかりますが。

安次嶺:最初から初期救急をみないということ はできないので、患者さんに理解していただい て、「軽症の場合はこちらにいらしても、待ち 時間が長くなりますよ」とお願いしているとこ ろです。このようなこともあり、最近は少し落 ち着いたのではないかとも考えています。

玉城:先日、うちの看護師さんが、「子供が熱 発したので、近いからと医療センターに行って 長いこと待たされた。」と話していました。私 は「だめだよ!あそこは難しい病気を見るとこ ろだから、軽い病気は他の病院にいきなさい。」 と話しておきました。

安次嶺:6月1日に那覇南部地区小児科医の意 見交換会を開催し、救急の連携について話し合 います。今後もこの会議を持って小児救急体制 の充実に努めたいと思います。

病院全景写真

病院全景写真

2.こども医療センターの使命は

玉城:小児の救急も大切ですが、こども医療セ ンターが持っているその他の高次機能を高めて いくことも大切だと思いますが、どのように機 能のアップに努めていかれますか。

安次嶺:そうですね。誰もが“こどもに関して はこの病院だ”という認識を持つようにしたい ですね。そのために那覇病院に加えて琉球大学 や中部病院から優秀な先生方を結集してスター トしました。沖縄県全体のこども医療のために は内容の充実が絶対に必要になります。

玉城:このこども医療センターで生き生きと医 療に専念できる環境が出来上がると、現在少な いといわれている小児科を希望するドクターが 増えてくると思います。

安次嶺:そうですね。それは僕も大事なことだ と思います。多忙のためにくたびれていると、 ドクターや職員自身も生きがいをなくしていき ます。このようなきれいな病院でアメニティー もよく、重症患者のことなどもしっかりと教育 してくれるようなところは、若者の教育の場と しても大切なことだと思います。

実は、バイロン青木先生というコンサルタン トがこども医療センターにいるのです。先生は ハワイ大学の元准教授で小児の救急や集中治 療、新生児医療にとても詳しいのです。こども 医療センターの小児科は大変レベルアップする ことが予想されます。

玉城:そうですね。こどもの医療が大変レベル アップすると大人部門の南部医療センターの診 療内容も変化してこざるをえませんね。これま での、たくさんの患者さんを診ることで収入を 上げるというような薄利多売的診療ではなく て、難しい疾患を多く診ていくということが大 切だと思われます。他の病院から紹介を受ける ような診療の質の高さが必要になるでしょう。

安次嶺:そうです。どこでもやっている医療と いうのはいずれ減っていって、最先端医療をここで引き受けていくようにしなければいけない と思っています。

玉城:放射線機器もすごく良いものがそろって いるので、医師も放射線科その他のスタッフも どんどんレベルを上げて、よその病院から多く の研修生を受け入れることをして欲しいと思い ます。

安次嶺:心臓の治療に関しては大変期待がもて ますよ。バイパスグラフトをした患者さんの血 流が直ちに見える機器があり、手術の成否がす ぐわかるのです。現在、週に3回ほど心臓の手 術をしているのです。小児の心臓も含めて今後 ますます仕事が増えていくでしょう。多くの研 修医やローテーションの医師が必要になってく ると思います。

こども医療センター 外来

こども医療センター 外来

玉城副会長

玉城副会長

安次嶺院長

安次嶺院長

3.人材育成、研修などをどのように計画していますか。

安次嶺:これまでは初期研修の救急教育の場と しては中部病院の指導をいただきながら進めて きました。後期研修に関しても中部病院と本院 で合同のプログラムを組んで研修する計画にし ています。

先日、沖縄県医師確保対策検討委員会が開か れました。沖縄県、県医師会、県立病院、県公 務員医師会、琉球大学などが参加していますの で、今後、県内の各施設が一緒になり人材育 成、医師確保の事業が展開されると思います。

玉城:先日、医療センターの麻酔科の村田先生 が話していたのですが、沖縄県では離島に対し て麻酔科の配置で困ったことはないと話してお りました。それは麻酔科の教授と県立病院との 話し合いで、琉大の麻酔科のドクターは必ず離 島での2年間勤務を義務付けたとのことです。 それで自分の生活設計に応じて、子供が小さい ときに離島勤務を希望して、教育の問題が出そ うなときに本島に戻ってくるような話でした。 また、離島に勤務した後は優先的に本人が希望 する病院に配置してくれるようです。

安次嶺:実はその話は那覇に来て私もわかった のです。麻酔科に関して県立病院は琉大に大変 感謝しなければいけないと思います。これまで は県立病院と琉大は多少いがみ合っていること がありましたが、これからは仲良く沖縄の医療 支援をしていけたら良いと考えています。

玉城:先日の会議には私も参加していたので す。これまで中部病院で多くの自治医大出身の 医師を育ててきていますが、義務年限が終わっ た後は自由にしていいといっていますが、ある 意味では無責任に放り出していることになりま す。そこで専門医研修の意味も含めて、琉大の 先生方に話をしてみました。自治医大卒医師の 義務が終わった10年目のドクターでも医局に入 れてもらえますかと。もちろん専門医コースを 研修するモチベーションの高い人なら大歓迎だ といっていただきました。

琉大以外にも県内には多くの専門医養成ので きる医療機関があると思われますので県医師会 が後期研修の中でそれらの医療機関の紹介がで きるようにしたいと考えています。

安次嶺:そうですね。各医療機関の宣伝ではな く、医師会という第3者機関があらゆる情報を 持って後期研修を受けたい医師の仲介ができる といいですね。

玉城:長崎県の離島医療センターでの医師募集 案内の中に面白いことがありました。2年の勤 務年限ですが、1年半勤務すると6ヶ月の研修 ができるし、また長崎大学と一緒になり、離島 医療を基にした研究で博士号がもらえるシステ ムもあるとのことです。

安次嶺:インセンティブですよね。中部病院で は初期研修をやり、宮古や八重山へ送りますが、 そのあとのことは面倒を見ないでご自由にどう ぞということでしたが、これからはその後の進 路なども考えていかなければいけないですね。

玉城:県立病院にポストがなければ、沖縄県全 体で後期研修のポストを考えることができたら いいですね。

安次嶺:医療センター内に「離島医療支援セン ター」が設置されますが、離島医師の派遣に関 しても離島の病院の採用という形ではなく、南 部医療センターに脳外科や産婦人科医師を採用 して、離島へ派遣するという形で人事のローテ ーションを図っていこうと思っています。

玉城:これからは県立病院、琉大病院、民間の 医療機関などが一緒になり、沖縄県全体の医師 確保をしていかなければいけないと思います。 その中でも南部医療センター・こども医療セン ターの役割は大きいと思います。

それで、先生方の宣伝に県医師会としても一 役買わせてください。県医師会報の生涯教育コ ーナーや新聞の「命ぐすい耳ぐすい」コーナ ー、「うちなー健康歳時記」コーナーなどに、 こども医療センターではこんなことをしていま すよと書いてくれませんか。広報委員会として も大変助かります。

安次嶺:よろこんで引き受けましょう。書ける 人はたくさんいますよ。

玉城:本日は長い時間ありがとうございまし た。南部医療センター・こども医療センターの 活躍を応援しています。

こども医療センター 外来