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Emotional support 〜doing とbeing〜

かみや母と子のクリニック 小児科 神谷 鏡子

そもそも医師会のリレー随筆などという大そ れた件を何気なしに承諾しまった私に責任があ るのですが・・・最近あった出来事といえ ば・・・そうそう・・・私達診療所は産婦人 科、小児科を一緒に開業しているものですか ら、専門の先生方にはお分かりでしょうが、周 産期という考え方で、妊娠中のケアから分娩、 そして子育てという母子をともに支援したいと 考えて日々の医療に励んでおりますが・・・そ の中で当院が重要と考えているのは母と子の絆 です。実は私はこの話は国立岡山病院小児科で 有名だった故Y先生の講演を聴いたのがきっか けでした。それは私が長男を生んで2ヶ月ごろ だったかな?とおもっていますが・・・小児科 地方会の特別講演で先生のお話をきいて、私は 自身が小児科医として母親として失格かな?と 思った内容でした。そのころは研修後数年でし たから、疾病の勉強ばかりしていましたので、 先生の講演は小児科医を超えて人間のすばらし さ、それにかかわる小児科医、産婦人科医の重 要性とその役割、そして人間として支えあう人 と人との関係の基礎づくりが出生時から始まる というものでした。母子の早期接触、母乳育児 を通した母子関係の重要性を強調なされていま した。

ところで皆様、BFHという言葉をご存知で しょうか?産婦人科、小児科の先生は一度どこ かで聞かれたことがあるかもしれません。BFH は、Baby Friendly Hospitalの略で、1989年、 WHOとユニセフの共同声明として発表された 「母乳育児成功のための10か条」を積極的に実 践している産科施設であり、「赤ちゃんにやさ しい病院」として認定をうけるものです。全国 に30施設くらいあります。日本の母乳育児の実 態は第2 次世界大戦後、急に母乳率は低下し 1979年代は1ヶ月検診で15%と最低だったそう です。事実、開発途上国にも人工乳が安全であ り栄養も十分であるとの乳業会社の宣伝により 母乳より人工乳が勝っていると宣伝された結 果、開発途上国でおきた感染症蔓延による悲惨 な結果はCunninghamの論文にかかれていま す。人類がその天からの賜物である母乳を捨て 去ろうとした愚挙に対して天が怒ったとしか考 えられません。その犠牲に対してWHOやユニ セフが危機感をもってその対策に乗り出しまし た。その一環として母乳育児の重要性を全世界 に訴えるため、この10か条を推進し、1991年 からBFHの認定を始めました。

現在、BFHは日本母乳の会がユニセフから 委託業務され認定にあたっています。

ところで前おきが長くなりましたが、先日、 この選定委員会の方々が当院の審査にいらっし ゃいました。日本の新生児医療を担っている聖 S病院の母子総合医療センターの先生やある周 産期センターの先生など日本の母乳のトップレ ベルの先生方でした。審査とは現在の当院の母 乳率、各スタッフ間の勉強内容などが評価さ れ、さらに患者さんにも面接があり、なかなか 厳しいものでした。さすがに久々国家試験並み に緊張しましたが、まだ国家試験の方が傾向と 対策があり、楽だったかな?と思いました。母 乳育児を推進するうえでの重要なポイントがい くつかありますが、母と子の早期接触(カンガ ルーケア)、早期授乳、母児同室、実はどれも 自宅分娩では当たり前のことですが、現在は意 識しなければ母乳育児が困難であるということ はとても悲しいことです。その中でどうやって 良い母子関係をうまく築くかが人間の基本的信 頼関係の土台作りです。これを支えるのに最も 重要なのは、技術でもなければ知識でもなく emotionalなsupportです。

Emotional supportとは精神的支援、やさし い勇気づけです。私達が医学部の勉強をした頃 は、必須教科に心理学はあったかどうかは?は っきりいって覚えていません。ところが、臨床 医になって初めてどんなことにも精神的な支援 がいかに必要かが身にしみてわかるようになり ました。昔から「医は仁術?」といわれる所以 かな?と思います。母子関係を築く第1歩とし て母乳育児があります。出産後2、3日までは母 親の不安が強く、「頑張れ」など、叱咤激励の 言葉は禁句です。どんなお母さんも子供のため に一生懸命頑張っているのですからこれ以上は 頑張れません。このつらい時期に母親の気持ち に寄り添い、いろいろな感情を母親と共有する こと、良い聞き手になることこれだけで母親は 驚くほど前向きになり自分でそれを乗り越えて いきます。ある臨床心理士の人の話の中で、 supportには何かをするという「doing」と寄 り添うという「being」の2つがあるそうです。 サポートとは何かをしなければならないと思い がちで特に医療者はこの「doing」がメインの ような気がします。事実今までは何かをしてあ げなくてはと考えていましたが、それも大切か もしれませんが、常に傍らに存在する、寄り添 う「being」も重要であるということです。こ れは医師じゃなくてもいいかもしれませんが、 まだまだ医師になって○年?未熟者!修行が足 りないなあ?と最近つくづく感じている今日こ の頃です。

★リレー状況

  • ー平成14年以前掲載省略ー
  • 17.西平守樹先生(西平医院)Vol. 39 No. 2
  • 18.澤口昭一先生(琉球大学医学部眼科学講座)Vol. 39 No. 3
  • 19.安里良盛先生(安里眼科)Vol. 39 No. 5
  • 20.照屋 勉先生(てるや整形外科)Vol. 39 No. 6
  • 21.国吉 毅先生(南部徳洲会病院)Vol. 39 No. 9
  • 22.吉川朝昭先生(西崎病院)Vol. 39 No. 11
  • 23.濱崎直人先生(沖縄リハビリテーションセンター病院)Vol. 40 No. 1
  • 24.永山盛隆先生(豊見城中央病院整形外科)Vol. 40 No. 2
  • 25.武内正典先生(武内整形外科)Vol. 40 No. 5
  • 26.長嶺功一先生(前県立那覇病院長)Vol. 40 No. 7
  • 27.奥島憲彦先生(ハートライフ病院)Vol. 40 No. 10
  • 28.豊見山直樹先生(那覇市立病院)Vol. 40 No. 12
  • 29.仲間 司先生(県立那覇病院)Vol. 41 No.5
  • 30.新里 讓先生(沖縄赤十字病院)Vol. 41 No.11
  • 31.友利正行先生(ともり内科循環器科)Vol. 42 No.2
  • 32.具志一男先生(ぐしこどもクリニック)Vol. 42 No.3
  • 33.古謝 淳先生(医療法人陽和会南山病院)Vol. 42 No.5