認知症の行動・心理症状

宮城航一・オリブ山病院(2018年10月10日掲載)

家族の苦悩・苦労理解を


 認知症の人に見られる、介護家族の手に負えない症状である、すぐ怒りだす、暴言を吐くなどは、記憶障害そのものの症状というより、記憶障害、病識の欠除、見当識障害などの中核的症状の結果、日常生活能力が障害され不安を感じている状況から生じています。日常生活での失敗を家族から叱責(しっせき)されると、自分は認知症であるという意識がないので、ばかにされたと怒ってしまいます。このような問題行動が「行動・心理症状」です。


 認知症者にとって、行動・心理症状は理由があっての行動です。行動・心理症状には確立した対応方法はありませんが、私は、認知症者の立場になって考えると良い接し方が思いつくと理解して患者と向き合っています。家族の対応の仕方で行動・心理症状を生じさせることもあります。


 行動・心理症状は、服用中の薬が影響していることもあります。認知症は高齢者に多いので、多くの持病を抱えたくさんの薬を服用していることから、認知症者の20%程度に、急に普段と違う注意・意識水準の変化(過覚醒だが意識の狭窄(きょうさく)をきたした状態)を呈する「せん妄」を合併します。多くの場合、原因が取り除かれると元に戻ります。


 認知症でも独居している例が多くなってきました。服薬が守れず、十分な食事を取れず、揚げ句は脱水を起こしてしまいます。家族に連絡すると関わりたくないと言われる、行動・心理症状どころではない心が痛い状況もあります。


 認知症者に優しいまちづくりは、市民が、認知症者の苦悩、介護家族の苦労を理解することから始まります。社会との関わりを維持し、個人の趣味・興味・レジャーを継続させる支援が認知症者の精神的安定に効果的です。


 しかし、食事・排せつ・入浴という日々の介護に精いっぱいの介護家族には、とても手が回りません。地域にボランティアをコーディネートする人がいればと思います。認知症疾患医療センターでは、介護家族のさまざまな思いを語り合う「認知症家族会」を開催しています。

このページのトップへ