抗生剤の正しい使い方
二木良夫・ありがとう子供クリニック(2018年4月4日掲載)
風邪の特効薬 今もなく
4月から新しい年度が始まり、待ちに待った保育園の入所健診に小児科医を受診する子どもがたくさんいます。しかし保育園に通うようになると、咳(せき)コンコン、水っぱなをして帰ってきます。早速風邪をもらうのです。
健康な子どもでも1年に6回は風邪をひきます。症状としては、熱が2~3日、鼻水、のどの痛みが4~7日、咳が1~2週間続きます。風邪の特効薬は今もなく、基本的に治るのを待つしかありません。お医者さんを受診し、抗生剤をもらって治ったこともあるかと思います。しかし「抗生剤が効いた」のではなく、自分の力(免疫)で治ったのです。実は、風邪には抗生剤は全く効きません。その理由は(1)抗生剤は細菌(バイキン)にしか効かない(2)風邪の原因は細菌ではなく、ウイルス(3)細菌とウイルスは全く別物(ウイルスは細菌よりもずっと小さくて顕微鏡でも見られません)。
それではいつ抗生剤を使うのでしょうか? 風邪は万病の元です。風邪がこじれて、中耳炎(耳)、副鼻腔炎(鼻)、気管支炎、肺炎になった時には抗生剤が必要です。抗生剤をむやみに服用すると、体の中の細菌がどんどん強くなって、抗生剤が効かなくなります(耐性菌)。そうなると本当に必要な時に大変です。今までは、耐性菌にも効く新しく強い抗生剤を開発してきました。しかし、これはいたちごっこで、ついにどんな強い抗生剤も効かない超強力な耐性菌が出現しました。
米国のオバマ前大統領は、「これは悪夢の耐性菌だ」と言い、世界で年70万人が耐性菌で死亡。米国政府は対策しないと、100兆ドルの損害と試算(国家予算の25倍)。2050年までに癌(がん)死亡を上回るとコメント。遠くない未来、医師「○○ちゃんは肺炎です」母「先生、治りますか?」医師「残念ながらもう効くお薬がなくなってしまい、自然治癒に任せるしかないです」なんてことが。日本の厚労省も薬剤耐性菌対策アクションプランを作って、啓もう活動を広げています。
抗生剤を「正しく使う」ために知っておきたいことは(1)風邪に抗生剤は効かない(2)処方された抗生剤は医師の処方どおり服用する(次のためにとっておかない)(3)「手洗い、ワクチン」での予防がやっぱり大切です。