高齢者の運転

外間宏人・琉球大学付属病院(2018年2月14日掲載)

移動手段の確保重要


 すでにわが国では世界でもまれな超高齢社会を迎えていますが、残念なことに連日のように高齢者の運転ミス絡みの事故に関する報道が続いています。昨年3月には改正道路交通法施行により、高齢者による交通事故防止のため認知症などに対する対策が強化されました。今回は、認知症診療に携わる一医師の立場でこの問題について取り上げたいと思います。


 認知症は正常に発達した知的機能が持続的に低下し、社会生活に支障をきたすようになった状態とされ、正常老化と区別されています。


 認知症には記憶障害を中心としたアルツハイマー型認知症と近縁の病態で幻視や、錯覚を伴うレビー小体型認知症、脳血管の出血や梗塞によって起きる脳血管型認知症などがあります。個々の認知症の方々には個性があり、しゃくし定規に評価していくのは困難で全人的な見方が必要となります。


 先の三つに比べて頻度は少ないのですが、運転に関して特に注意が必要なタイプが前頭側頭型認知症です。


 前・側頭葉の関わる注意、判断、社会性、衝動性の制御などの低下がリスクとなります。


 上村、池田らによる認知症の事故リスクの調査では全体の事故率は83人中34人(41%)でしたが、事故内容ごとに見ると前頭側頭型では重大事故につながりやすい信号無視や追突、脇見運転などが他の病型より高かった(63・6%)としています。


 最後に強調しておきたいのは、免許返納制度を利用された方には一定の利点もありますが、ご家族や関係機関の協力の下、移動手段喪失へのしっかりとした事前の対策、代替手段の確保が重要です。


 ご本人の生活の質の低下→自尊心の傷つきから「うつ」の発症→さらには認知症そのものも悪化→生活困難から施設入所といった悪循環も起こり得ます。安全で健やかな高齢社会を目指すためには、高齢者の移動のための社会資源の整備もますます重要になると思われます。

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