高齢者のフレイル
渡邊丞・ロクト整形外科クリニック(2017年11月22日掲載)
老いの変化に気づいて
歩行速度が落ちていく、転びやすくなる、背中が丸くなる、疲れやすい。日々の診療で、このような老いの症状をきたす高齢者に度々お会いします。健康と要介護の間とでも表現すべきか、加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下した状態を、老年医学の用語で「フレイル」と呼んでいます。
フレイル状態になると、その活動レベルの低下から、風邪をきっかけに肺炎を発症したり、転倒して骨折をしたりと負の連鎖が始まります。骨粗しょう症の方に多い背骨や太ももの骨折は、手術が必要な場合もあり、長期の療養を要するため、さらなる活力の低下を招いてしまいます。
この負の連鎖は、運動機能を衰えさせるばかりではなく、精神にも大きなダメージを与えてしまいます。自信を喪失してしまい、家に閉じこもりがちとなり、社会的なつながりが次第に失われていきます。このような事態に陥るのを防ぐために、フレイル状態からの脱出を図らなければなりません。
フレイル状態は、元の活動レベルを取り戻すことのできる可逆的な状態です。臨床現場では、リハビリで筋力トレーニングを行うことで、再び活力を得ていらっしゃる高齢者をしばしば目の当たりにしますが、高齢者でもトレーニングを行えば必ず筋力はつきます。負の連鎖が始まる前に、自分の身体の現状を把握し、将来の健康のために自分自身に意識づけを行うことが肝要です。また、周囲の家族や医療者が活動レベルの変化に気づき、サポートできる環境をつくることも大切です。
50代、60代の方も自分の症状に蓋(ふた)をしてはいけません。骨粗しょう症や関節の変形は50代から始まることが多く、全身の健康状態と密接に関わっています。以前より階段昇降がきつくなった、つまずきやすくなったという症状は活力低下の危険信号かもしれません。10年先の自分の健康状態を想像することは難しいことかもしれませんが、日常生活での老いの変化に気づき、心身ともに健康でいることを心がけることが大切です。