痛みの悪循環

白石瑛盛・南部徳洲会病院(2017年8月9日掲載)

交感神経が過剰に反応


 痛みは、誰にとっても嫌なものです。例えば脛(すね)を打撲し痛み腫れを生じたら、冷やしたり、湿布したり、痛み止めの薬を服用したりします。そうすると、その後数日でほぼ治るものです。しかし腫れの引きが遅く、痛みがずっと残り、打撲部が赤黒く色が変わることがあります。数カ月以上症状が尾を引くこともあります。これは打撲した場所の自律神経のうち、交感神経が痛みにより興奮し、同時に血管を縮めているためです。 その結果、血の流れが悪くなり昔から東洋医療の鍼灸指圧で言われている「悪い血が溜(た)まっている」という状態になります。こうなると、神経の情報を体の各所に伝える物質や、入れ替わっていく栄養物質などさまざまに体を作っている物が痛みを生ずる発痛物質と言われるものとしてたまりだします。たまった発痛物質が痛みを強くし、さらに交感神経を刺激し血管を縮めます。坂道を転がり落ちるように痛みが増悪する状態を痛みの悪循環と呼んでいます。普通はここまでの段階に至る前に正常に戻す力を誰もが持っています。


 いつも正常でいる力を恒常性と言います。人は命と健康状態を正常状態に保つ力が備わっています。ペインクリニック、疼痛(とうつう)治療科等と看板を挙げた科でも同様の治療をしています。治療の本質はこの恒常性を取り戻すことに尽きます。これは全ての治療科でも同じことです。 痛みの悪循環への当科での治療としては、交感神経の過剰反応を戻すために局所麻酔薬(歯科で歯茎に痛み止めを打つのと同じ注射液)を効果的な部位に打つことです。神経の近くに打つ、痛みを生じている所(鍼灸(しんきゅう)のツボ、押して痛みが増悪する所、脊髄神経が圧迫され痛みしびれを生じていればその場所の脊椎を包んでいる膜の外に)に打ちます。その後しばらく休んで血圧等が安定していて、注射の効果を確認したら終了です。頭痛、顔面痛、顔面神経麻痺(まひ)、帯状疱疹(ほうしん)後神経痛、頸部(けいぶ)・胸部・腰部痛、座骨神経痛、上肢・下肢痛などがペインクリニックの対象として多い病です。

このページのトップへ