高齢者の食事

金城聡彦・かじまやークリニック(2017年5月16日掲載)

食べたくなる食事提供を


 高齢化社会において避けて通れないのが食事の問題です。身内の方が年齢と共に食事量が減ってきて、だんだんと体重も落ち、本人は食べたがらないけれどなんとか栄養を取ってほしい、というような状況になった経験を持つ方も多いのではないでしょうか。


 食事が全く取れない場合はやむを得ず胃瘻(いろう)や経鼻栄養とするなど対策はいろいろありますが、今回は残っている食欲を刺激して食事量の改善を期待する方法をご紹介します。


 マズローの欲求五段階説というのはご存知ですか? 人間は置かれている状況によって欲求が変わるそうです。一番下の段から(1)生理的欲求(水・酸素・食べ物)(2)安全欲求(衣食住)(3)社会的欲求(集団への帰属)(4)尊厳欲求(周りに認められたい、冒険したい)(5)自己実現欲求(やりたいことをやる)とあり、下の段から順に欲求が満たされると上の段の欲求が生じてくるという理論です。


 これを食事で当てはめてみると(1)生理的欲求:のどが乾く、おなかがすく→なんでも飲む・食べる(2)安全欲求:食べ慣れているものが食べたい→慣れている味付けや温度の食事、緑茶よりはさんぴん茶、施設の食器よりも、自前の食器なら食べる(3)社会的欲求:一人で食べるのはさびしい→みんなと一緒なら食べる(4)尊厳欲求:ほめられたい、珍しいものなら食べたい→ほめられるとより食べる、故郷の特産品なら食べる(5)自己実現欲求:こだわりのもの、おいしいと思っているものなら食べる→てびちやソーキ、フライドチキンなら食べる、といったところでしょうか。


 飲み会やバイキングで、ついつい余計に食べてしまう経験はありませんか? 団らんでは2人で食べると41%、6人だと76%も余計に食べてしまうという報告もあります。高齢者では、食事が少なくても(1)の生理的欲求が生じない状態と考えられます。人それぞれ好みは違いますので、これならよく食べます!とは一概には言えません。食事量が落ちてきた時は、より上の欲求段階を考慮した食事提供を行ってみてください。

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