高齢者と薬
比嘉啓・首里城下町クリニック第二(2017年3月14日掲載)
5~6種超は転倒事故増
先日報道で、従来65歳以上とされていた高齢者の定義を75歳に繰り上げて、65歳~74歳を「准高齢者」とする案が発表されました。10年前と比較して、65歳~75歳の方は体力的にも知的にも若返っているという判断からくるようです。
そうは言っても、現実的には年齢を重ねるごとに体の変調をきたしてお薬を必要とする頻度は多くなってきます。医療機関を受診される方も、高血圧、糖尿病、心臓疾患、慢性腎臓病、脳卒中、不眠、肺炎等々いくつもの病気が合わさっていることは、高齢者ほど多いことがわかります。
病気が増えるごとに一般的にお薬が増えてきますが、ある施設からの報告では、薬が5~6種類以上になると、有害事象や転倒事故が増える傾向がみられるということです。また厚労省の最近の調査では、75歳以上の40%もの方が5~6種類以上の薬を処方されているとのことです。
一つ一つの薬の開始には当然理由がありますが、継続される間に、おのおのの薬の相互作用、加齢に伴う薬物代謝能力の低下など、弊害の危険性が高まることが予測されます。優先順位的あるいは効果と有害事象をてんびんにかけて見直す必要があります。
そこで重要になるのが、お薬の整理です。転倒事故やふらつきは、睡眠・安定剤や降圧薬、糖尿病の薬などが原因ではないか、適切かどうか見直す必要があります。従来多くの睡眠剤は長期処方ができないお薬でしたが、最近比較的弱い睡眠剤も長期処方が禁止されました。
その背景には、やはり薬物依存に伴う転倒事故の多発があります。また昨年糖尿病の目標基準が高齢者では緩和されました。これも厳しく血糖をコントロールするあまりに、高齢者では低血糖発作の危険が高まることが知られているためです。
一概に多剤内服がダメとは言えず、それぞれの患者さんの病態に合わせた調節が必要なことは言うまでもありません。やはり、内服薬が多い方は主治医と相談されてみたほうがいいでしょう。