偽薬
吉川朝昭・よしかわ整形クリニック(2017年2月21日掲載)
期待で効果本物に
偽薬とは、薬効成分が全く入っていない偽物の薬です。偽薬は薬品開発に役立ちます。患者さんを本物の薬を処方する群と偽薬を使う群に分け、その効果の違いを客観的に判断するのです。
痛みや主観的な機能の改善などにおいては、偽薬グループでも有効率は20%~30%に達することもあります。これは単に気のせいというだけではありません。「効くかもしれない」という期待や「これで治るに違いない」という思い込みが、交感神経の興奮を抑え、末梢(まっしょう)血管を拡張し、疼痛(とうつう)部位の血流を改善します。
さらに痛みを緩和する物質の産生の増加や発痛物質の抑制などの疼痛緩和メカニズムが作動します。偽薬効果は客観的な臨床検査や機能評価においても改善する場合も少なくありません。精神活動が免疫力、自然治癒力に大きな影響を与えるとの報告もあり、偽薬の有効性は偽物ではなく本物です。
医学的常識からすれば、効果が出るはずがないと思われる民間療法や健康補助食品が、ある一定の支持を得ているのは、この偽薬効果に他なりません。高額な価格設定や体験談は偽薬効果をさらに高めます。
偽薬効果について、否定的な意見を述べていると思われるかもしれませんが、そうではありません。偽薬効果は副作用のない医者の妙薬でもあります。「この薬は非常にいい薬だから」とか「この注射は画期的なものだ」と患者さんに威厳を持って、そして親身になって説明すると、本来もつ薬の効果は2倍にも3倍にもなります。使わない手はありません。
自戒の意味を込めて、そして誤解を恐れずに言わせてもらうと、医者は病気に悩む患者さんのために、医学的効果と偽薬効果の境界を正しく認識し、その相乗効果を最大限に引き出す努力をすべきであります。そして患者さんは、ちまたに氾濫する根拠のない健康関連情報に惑わされることなく、病院では医師の使う偽薬効果に、広い心でご協力していただきたいものです。