痰と食道
真栄城徳秀・真栄城耳鼻咽喉科(2017年1月31日掲載)
正しい知識持って
多くの患者さんが痰(たん)の出る場所と食道のある場所を誤って理解しているようなので、紙面を通して正しい知識を伝えたいと思います。
「のどに痰が落ちてくる」これは患者さんがよく訴える症状の一つですが、私たち耳鼻科医はこれを聞くと?マークになってしまいます。なぜなら痰というのは気管や気管支から出る分泌物のことを言うのであって鼻からは出ないからです。鼻から出るのはあくまで鼻水(鼻汁)で、痰はのどの下の方、あるいは胸から出るのです。
鼻水がのどに流れる症状のことを「痰が出る」と言う患者さんがけっこういます。これを医師がそのまま受け取ると気管支炎と診断してしまう可能性があります。誤った診断をつけられないためにも患者さんはぜひ、自分の症状はそのままの表現で「鼻の奥にドロッとしたのがたまっているみたい」とか「鼻からのどに粘っこいのが落ちる」とか言ってほしいです。それが重要な情報となり正しい診断の手助けとなります。
次は食道についてです。以下は私と患者さんとのやりとりです。
〈患者〉のどにがんがないか調べて下さい。〈私〉(診察終了後)のどにがんはありません。〈患者〉良かったです。食道がんが心配だったのでほっとしました。
これを聞くと私の頭の中は、はたまた?マークなのです。なぜならのどにあるのは咽頭(いんとう)と喉頭(こうとう)だからです。食道も一部はのどにありますが、大部分は胸に位置しています。従ってのどにできるがんはほとんどが咽頭がんか喉頭がんです。食道がんは一部だけがのどにできます。食道がんの有無を調べるためには胸の検査が必要ですので、食道がんが心配な方は耳鼻科ではなく消化器内科か消化器外科を受診されてください。
食道の上に咽頭があり咽頭→食道→胃と続き、これらは食べ物の通り道になっているため消化器といいます。気管の上に喉頭があり、喉頭の中に声を出す声帯があります。喉頭→気管→気管支と続き、これらは呼吸をするための空気の通り道になっているため呼吸器といいます。いわゆる「のどぼとけ」が喉頭です。