職場の健康診断
辻田敏・辻田労働衛生コンサルタント・産業医事務所(2016年7月26日掲載)
気付きの機会 活用を
職場では労働安全衛生法(労安衛法)66条に従って健康診断(健診)を実施しています。しかしその実態には産業医として気になることが3点あります。
第1は、健診を受けない人が珍しくないことです。大抵は「仕事が忙しくて健診を受ける暇がない」と言い訳しますが、自己負担なしで健康チェックできる機会を放棄するとは実にもったいない話です。しかもそれだけではありません。労安衛法は事業者が労働者の健康管理を万全に行えるように労働者にも健診を受ける義務を課しています(66条5)。
もし過重労働のために労働者に健康障害が発生して、事業者に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求する際に、労働者が健診を受けていなければ、過失相殺の対象となる可能性があります。つまり健診を受けないと大変不利になるわけです。
第2は、健診で異常を指摘されても放置する人が少なくないことです。高血圧や高脂血症、高血糖を放置すると、動脈硬化が進行して脳卒中や心筋梗塞を発症し、まひなどの障害が残ったり寝たきりになったりすることがあります。また尿タンパクが陽性なら、慢性腎臓病の危険性があり、放置すると腎不全から人工透析が必要となります。健診で異常が見つかったら、産業医や産業保健師と相談して仕事の仕方や生活習慣を見直し、必要なら医療機関で治療を受けて、いつまでも元気で働き続けることができるように心掛けてください。
第3は、せっかく費用をかけて実施した定期健診の結果を労働基準監督署に報告するのみで、なんら経営に役立てずにいる企業が少なくないことです。社員が不健康なら企業の生産性が低下するであろうことは容易に推測できます。社員の健康度の維持向上は経営上の重要課題です。健診結果の動向は経営施策の可否を判定する良い指標となるのでしょう。
労働者一人一人が健康で働き続けるために、そして企業が生産性を向上させるために、職場の健診を活用しようではありませんか。