体外受精
中里和正・ウィメンズクリニック糸数(2014年11月18日掲載)
30代前半まで高い妊娠率
Tさんからいただいた暑中見舞いのはがきに、5人のお子さまが写っていました。5人とも体外受精で妊娠し、生まれたお子さまです。健やかに育っており、感慨もひとしおでした。
今から12年前の12月にTさん(当時25歳)は来院されました。検査してみると両側の卵管が先端部分で詰まっており、自然妊娠の可能性はなく、腹腔鏡(ふくくうきょう)手術をしても自然妊娠できる状況ではありません。診察室でこのことを告げられたTさんは、静かに涙を流しておりました。
体外受精は卵管を切除した人たちの妊娠手段として発明されました。今では原因不明で長期不妊の人たちにも適応されています。卵巣から卵子を回収し、体外で精子と出合わせ受精卵を作り、胚に育てます。これを子宮に胚移植をして妊娠を狙うのです。
Tさんは1回の採卵(卵巣から複数個の卵子を回収する)で7個の卵子を回収しました。すぐに胚移植をして長女を妊娠しました。余った胚は凍結保存しました。この凍結胚で長男を妊娠しました。その後3人目を希望して来院されましたが保存している胚はありませんでした。
2回目の採卵で12個の卵子を回収しました。今度は受精した胚を全て凍結して保存しました。これを使って次女と次男、三男が生まれました。このようにして8年間で5人のお子さまに恵まれたのです。
女性の宿命として年を重ねれば卵子は老化し、どんな治療においても妊娠率は低下します。「おぎゃあ」と生まれた時に卵子の基になる細胞の数は決まっており、新しく作られることがないからです。体外受精のように人体の外に卵子を取り出し、受精を行い、人工環境で受精卵を培養する治療は特に卵子の老化の影響を受けます。
30代前半までは40~50%の妊娠率が見込めても、40歳を過ぎると妊娠率は10%台に落ちてしまいます。44歳以上ではほとんど妊娠例がありません。結婚後なかなか妊娠に恵まれず思い悩んでおられるご夫婦は、お早めに専門施設に相談してください。