職業性ぜんそく
町田宗正・町田医院(2014年11月11日掲載)
職場環境の改善を
呼吸器内科を標ぼうしている当医院で最近よく経験する「職業性ぜんそく」について紹介します。職業性ぜんそくは作業関連ぜんそくともいい、職場の環境や物質で起こるぜんそくで、特殊な工場だけでなく、身近な所ではパン屋、そば屋ぜんそくなどがあります。広い意味では換気の悪い職場のカビやダニによるぜんそくも含まれます。
ピザ屋のAさんはピザを作ると咳(せき)が止まらず、ケーキ職人のB子さんは慢性の咳で受診しました。長年スーパーで天ぷら係をしているC子さんも来院。舞踊家のD子さんは“おしろい”の吸引によるぜんそくで受診しました。いずれも原因は小麦粉に含まれるタンパク質に対するアレルギーと考えられています。イギリスではスーパーで働くパン職人の9%にぜんそく症状がみられるとの報告もあります。
E子さんはコールセンターに勤務していますが、職場で咳が止まらず、ひどい時は嘔吐(おうと)してしまいます。同じような人が8人受診しました。F子さんは洋服屋で働いてぜんそく症状が出るようになりました。保育士さん、ホテルや介護のベッドメーキングの仕事で、ぜんそくを発症した人もいます。これらは換気の悪い環境下でのカビやダニのハウスダストが原因と考えられます。職業性ぜんそくは仕事中に悪化し、複数の人が発症するのが特徴です。
ちなみに、咳は口偏に、イノシシを意味する「亥」と書きます。咳がイノシシの鳴き声に似ているからではなく、“ゴホッ”という音を表すそうです。咳を方言では“サックイ”といい、古い日本語の“さくり”(〓り、しゃっくり)が語源だそう。ぜんそくは“ヒミチ”といい、のどを締め付け苦しむさまを表す“ひめき(叫めき)”からきたといわれます。
「職業性ヒミチ」になると、わずらわしいサックイが続くだけでなく、離職などの経済的損失が大きいので、的確な診断が必要です。治療は仕事から離れることが一番ですが、現実的には換気に気をつけながら仕事を続け、ステロイドの吸入薬と職場環境の改善が必要です。
注:〓は口ヘンに「歳」(ただし「歳」の「示」の下部は少)