新型インフル特措法
島袋淳吉・しま小児科内科クリニック(2014年8月5日掲載)
「緊急事態」の対策を
本年4月、ある県で新1年生を担任する高校教師が入学式を欠席し、自分の子どもの入学式に出席するという出来事がありました。この選択に対して来賓の県議が「担任の自覚」や「教師の倫理観」に問題があると指摘したことが報道されました。
これに対して、ある在日英国人が報道誌上で異論を唱えました。「愛するわが子の入学式参加を職責より優先したこの教師の選択は尊重されるべき」と。
それでは医療の現場はどうでしょうか? もしも致命率の高い新型インフルエンザが流行した時、自らの生命の危険を冒しても職責を全うすべきでしょうか。答えは…。
昨年4月、新型インフルエンザ等対策特別措置法という法律が成立しました。全国的に急速にまん延の恐れがあり、国民の生命と安全が危機にさらされると判断された場合、政府が「緊急事態宣言」を行い全国の自治体、公共機関に対して対策を強制指示できるという法律です。医療機関に対しても新型インフルエンザ予防接種の優先接種を条件に診療継続を課しています。職責優先が明記されたのです。
5年前に新型インフルエンザが流行した際の大混乱が思い出されます。流行時は医療需要が爆発的に増えます。私の小さなクリニックでもわずか3カ月で、約3千人にインフルエンザ予防接種をしました。インフルエンザ検査が約900人、インフルエンザ患者が約2400人でした。通常の患者診察も行いながらです。職員も疲労困憊(こんぱい)しました。職責として可能な限り対応したつもりですが、同様なことは今後は無理だと感じます。
何しろ最近の若い世代は、上記の英国人のように子ども中心の生活を優先しているように見えるからです。立ち去り型看護師不足にならないよう、無理がなく、また万が一、新型インフルエンザに倒れることがあっても何らかの補償が受けられる体制をつくるべきではないでしょうか。「緊急事態宣言」に見合った対応がこの法律に明記されなかったのは残念です。