筋収縮のホルモン分泌
久田友一郎・浦添総合病院健診センター(2014年5月13日掲載)
老化制御の可能性
三浦雄一郎氏は2013年5月23日、エベレスト登頂に画期的な歴史を刻みました。最高齢80歳登頂の快挙を成し遂げたのです。これまで長寿の人生を送ってきた方々とは比較にならないスケールです。
三浦氏は80歳でエベレスト登頂を果たすという壮大な目標を掲げました。その目標を達成するために、これまでの日常の生活習慣や生活様式を変えて超人的な努力を積み重ね、目標を持ち、生きる姿勢や心が不可能と思われたエベレスト登頂を可能にした、と話されています。
三浦氏の80歳時の体力指標では、脚の筋力40代、骨密度20代という信じられない数値です。
加齢に伴い減少するホルモンは男性・女性ホルモンなど他にも多くのホルモンがあることが知られています。これらのホルモン減少は筋肉量の減少・内臓脂肪や皮下脂肪の蓄積・骨密度の低下などをもたらすことが知られています。三浦氏の体力指標はこれまでのホルモン作用で説明することはできません。
近年の研究論文では、筋組織は内分泌臓器であり、骨格筋の収縮は多彩なホルモン様物質「マイオカイン」を産生すると考えられています。
悪玉脂肪細胞は高血圧・糖尿病などを起こす多くのホルモン様物質(サイトカイン)を産生することはよく知られています。しかし、筋収縮は多くの「マイオカイン」を産生しますが、善玉のサイトカインを分泌する可能性が指摘されています。
2012年に同定されたイリシンという新規ホルモンは、筋肉の収縮により骨格筋から分泌されることが明らかにされました。イリシンは40代以降に増えてくる白色脂肪細胞(ミトコンドリアが少ない)を褐色脂肪細胞(若いときに多く、ミトコンドリアが豊富)に変えるといわれています。
若々しさを維持するホルモンが筋肉にあり、意志の力さえあれば筋力を増やすことができます。ヒトの身体には意志の力さえあれば若々しい身体を維持でき、老化をも制御できる可能性も秘められています。ヒトの心や身体は合目的にできていると思いませんか?