生活習慣病で悪くなる腎臓病

平野亜紀/あき内科クリニック(2022年9月24日)

食事改善と運動で目標血圧の維持を ~沖縄県医師会編


 クリニックには腎臓が悪くなったと相談に来られる方がいらっしゃいます。急に悪くなる場合には緊急の対応を要しますが、大体の方が長い年月をかけてゆっくり悪くなります。そのため、日々の診療での腎臓病の早期発見と対策が重要です。


 腎臓の働き(GFR)が健康な人の60%以下に低下するか、あるいはタンパク尿が出るといった腎臓の異常が続く状態を「慢性腎臓病(CKD)」といいます。日本のCKD患者は1330万人ともいわれており、これは成人人口の12・9%、すなわち8人に1人がCKDというデータもあります。


 糖尿病や高血圧をはじめとする、生活習慣病の増加によるところが大部分を占めています。以前は慢性腎炎症候群(腎臓の細い血管である糸球体の炎症が原因)が主でしたが、生活習慣病患者の増加で、現在では透析になる原因の第1位は糖尿病性腎症になっています。


 来院する方の中には「腎臓の薬をください」と依頼する方もいますが、生活習慣病で腎臓の動脈硬化を進めないためには、日々の食事療法や運動療法が一番有用です。かかりつけ医から処方されている糖尿病治療薬や降圧薬が腎臓病の進行を防ぐ薬になります。つまり、糖尿病を悪化させず、目標血圧を維持することが大切なのです。


 ほとんどのCKD患者さんは特に症状がなく、通院していたとしても病気に直面することなく過ごしている方がほとんどでしょう。ご自身の腎臓は今どのレベルにあるのかに関心を持ち、定期健診や治療の必要性を知ってほしいです。悪化して初めて腎臓の相談にいらしても、悪い状態になってしまうと改善させることは困難です。


 CKDは生活習慣病による動脈硬化が原因となることが多いため、脱水や薬剤の影響を受けやすくなります。適度な運動、禁煙とともに脱水予防のための十分な水分摂取、塩分の取りすぎに注意してください。コロナ禍で診療控えが問題になっていますが、治療を継続し、腎臓も健康でいられる未来を選択してほしいと願っています。

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