脳梗塞を引き起こす心房細動

比嘉聡/牧港中央病院 循環器内科(2022年8月25日)

バルーンを使った最新治療で正常な脈拍を維持 ~沖縄県医師会編


 心房細動(悪性の不整脈)による心原性脳塞栓(そくせん)症は脳梗塞の中でも最重症型で、いわゆる「ノックアウト型脳梗塞」を起こすことが問題となっております。この不整脈は加齢に伴い増加し、超高齢化社会を迎えるわが国では、2030年には患者が100万人を超えると推定されています。


 治療は(1)合併症のコントロール(2)抗凝固療法(血液の凝固を防ぐ薬物治療)による脳塞栓症の予防(3)不整脈治療による正常な脈拍の維持-があります。不整脈治療の中で抗不整脈薬による薬物治療は、有効性・安全性などの理由から、適応は限定的です。


 非薬物治療には、カテーテルアブレーションによる経皮的肺静脈隔離術という手術法があります。心房細動の主な発生源である肺静脈(肺からの血液を心臓に送る血管)と、左房(左側の心房)の間の電気的交通を遮断することで正常な脈拍を維持します。具体的には、血管内に挿入した棒状の電極先端から高周波を発生させ、肺静脈と左房の移行部を円周状に焼灼(しょうしゃく)します。


 この手術法に加えて最近では、冷凍ガスやレーザーを用いたバルーン(風船)システムが心房細動治療に使用されるようになりました。冷凍バルーンはマイナス40度から50度まで心筋組織を冷却することで、異常な電気的興奮の発生源である肺静脈を電気的に隔離することが可能です。レーザーバルーンでは標的とする心筋組織にレーザーを照射することによって、同じ効果が望めます。


 バルーンシステムは高周波を用いた従来法と比べて、切れ目のないより連続的な円周状の隔離線を作成することが可能で、さらに合併症も低減できることが報告されています。冷凍バルーンは最近、その有効性および安全性から発作性心房細動に加えて、より難治性の持続性心房細動の患者にも適応が拡大されました。


 このようなバルーンを用いたカテーテル治療により、安全に正常な脈拍を長期間維持することが可能になっています。

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