職種を超えて命のサポート
藤原直樹/沖縄県立南部医療センター・こども医療センター小児集中治療科(2022年8月11日)
小児集中治療室とチーム医療 知恵を出し合いケア ~沖縄県医師会編
Aちゃんは生まれつきの心臓病のため、生後間もなく手術を受けました。術後心不全が悪化し、PICU(小児集中治療室)で機械で心臓をサポートしました。全身管理を行う集中治療医、心臓を専門とする小児心臓外科医・循環器医、PICU専属の看護師、高度な機器を扱う臨床工学技士、理学療法士、患者家族を支援する臨床心理士やチャイルドライフスペシャリスト、検査、薬剤、栄養、事務部門などの多種多様なスタッフがチームとなり、Aちゃんとご家族を支えました。
PICUは、主に0~15歳の重篤な状態にある子どものための集中治療室です。大人の集中治療室(ICU)や赤ちゃんのための新生児集中治療室(NICU)はよく知られていますが、PICUの認知度はそれほど高くありません。ずっと以前の調査で、日本の1~4歳の幼児死亡率は、先進国の中で比較的高いことが分かりました。重症の子どもたちに対応する医療体制の不備、特にPICUとそこで働く集中治療医の不足、まれな重症小児患者をPICUに搬送し、集約して診るという仕組みが整っていなかったことなどがその原因とされました。10年ほどかけて全国で設置が進み、今では30ほどのPICUが各地で機能しています。
成人と異なり、重症の小児患者は決して多くありません。重篤な状態にある子どもに対して、ヒト・モノを集約して知恵を出し合い、チームで診る方が治療成績がいい、というデータがあります。
さらに、残念ながら治療に反応せず状態が悪化したお子さんに対して、職種を超え多種多様なスタッフがその子にとって最善は何か、ご家族に最大限のサポートを提供するために何ができるだろうか、とチームで悩みながらケアに当たっていくことはとても大切なことです。
コロナ下で困難な状況は続きますが、未来を担う子どもの医療に関わることができる幸せと誇りを感じながら、子どもたちの医療のさらなる充実と、病児、ご家族への温かい支援が広がることを願ってやみません。