一命を取り留めても後遺症が残る脳卒中
古屋佑一郎/自衛隊那覇病院診療部内科(2022年5月12日)
予防の近道は生活習慣病の治療 ~沖縄県医師会編
脳卒中とは脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れて出血する脳出血・くも膜下出血をまとめた総称です。脳梗塞や脳出血では手足や顔面のまひ、言葉を話せないといった症状、くも膜下出血では突発的に出現する激しい頭痛が特徴的です。
血管を詰まらせた血栓(血の塊)を溶かす、回収するといった脳梗塞の新しい治療法が近年登場し、良好に経過する例も増えていますが、日本人の死因の構成割合で脳血管障害(脳卒中)が占める割合は依然高く、2019年時点で悪性新生物(27・3%)、心疾患(15・0%)、老衰(8・8%)に次ぐ第4位(7・7%)です。
一命を取り留めたとしても、手足のまひ等の後遺症が残り、移動につえや車椅子が必要になる場合もあります。生まれつきの要因等で若くして脳卒中を発症することもありますが、多くは中高年以降、発症します。
主な危険因子には高血圧、脂質異常症(コレステロール値の異常)、糖尿病(血糖値の異常)といった生活習慣病の他、喫煙、多量の飲酒があります。健診では血圧、コレステロール値、血糖値を調べますが、これには脳卒中を含む血管が詰まる疾患の発症を将来的に予防するという大きな目的があります。高血圧、脂質異常症、糖尿病はいずれも、少なくとも初期には自覚症状がないため、治療の中断や放置をしがちです。
健診で早期に生活習慣病を見つけ、速やかに飲み薬による治療を始め、継続することが脳卒中予防の近道です。健診を長期間受けていない方が脳梗塞を発症し、病院へ搬送後に非常に悪化した状態の生活習慣病が見つかることをたびたび経験します。健診をしばらく受けていない方はまず受けることから始めてみましょう。
また、喫煙者は非喫煙者と比べて、脳卒中で死亡する危険性が2~3倍高いことが知られています。禁煙すべきか迷っている方は是非禁煙に挑戦して下さい。現在は保険診療で禁煙治療を行える場合もあります。生活習慣病の治療や禁煙により、脳卒中を適切に予防し、健康な生活を送りましょう。