突然襲ってくる脳卒中 急性期治療を担うSCUとは

竹下朝規/県立南部医療センター・こども医療センター脳神経外科(2022年2月10日)

1分1秒争う専門性・緊急性をチームで取り組む ~沖縄県医師会編


 「SCU」という言葉にはあまりなじみがない方が多いと思いますが、急性期の脳卒中の患者さんを診る脳卒中集中治療室(Stroke Care Unit)を略して、そう呼びます。脳卒中とは脳の血管が突然破れたり、詰まったりして、さまざまな症状を引き起こす病気です。脳の血管が破れた場合には脳内出血やくも膜下出血となり、詰まった場合には脳梗塞になります。


 脳卒中の治療には「専門性」と「緊急性」が必要とされ、その両方がそろってはじめて患者さんを救命したり、症状を改善させたりすることができます。特に脳梗塞の治療では脳の血管に詰まった血栓を薬で溶かす「t-PA静注療法」や、詰まった血管をカテーテルで再開通させる「血栓回収療法」などの1分1秒を争う専門性や緊急性が高い治療が必要になります。


 脳卒中の治療と共に専門的な知識を持った多職種チーム(医師・看護師・薬剤師・リハビリ・栄養士・ソーシャルワーカー等)が看護ケアやリハビリの調整などを集中的に取り組むことで、予後が改善することが証明されています。専門の医療スタッフが待機し、24時間いつでも診療に対応できることがSCUの特徴です。


 しかし、脳卒中医療が高度化するにつれて、地域によって受けられる医療に違いがみられるようになってきました。そのため、どの地域でも同じような脳卒中診療が受けられる仕組みが検討され2018年12月に「脳卒中・循環器病対策基本法」が成立しました。これにより、各地域に脳卒中診療の拠点となる一次脳卒中センターが選定され、現在県内には八つあります。ただし、高度な脳卒中診療ができるSCUを備えた医療機関は県内では数えるほどしかありません。今後は「専門性」や「緊急性」に応じた救急搬送の仕組み作りが重要になってくると考えられます。


 脳卒中は突然襲ってくる怖い病気です。急な激しい頭痛、手足や顔面のまひ、言葉の障害、めまいを感じたら様子を見るのではなく、ためらわずすぐに救急車を要請し病院を受診して下さい。

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