薬剤が効かないアタマジラミが増加、治療どうすればいい?

大平葵/国立療養所沖縄愛楽園皮膚科(2022年1月7日 WEB版掲載)

~沖縄県医師会編


 アタマジラミ症はアタマジラミという虫が頭髪に寄生することで起こります。寄生したアタマジラミは吸血し、産卵しながら増えていきます。頭をこすることで人から人へうつるほか、帽子やタオル、枕などの寝具を介してもうつるため、接近して生活することの多い保育園、幼稚園、小学校や家庭内で流行します。


 主な症状はかゆみで、不眠になったり、頭皮をかきすぎてとびひ(伝染性膿痂疹のうかしん)を併発してしまうこともあります。


 治療は、薬局で購入できるピレスロイド系薬剤(スミスリンシャンプー/パウダー、シラミとりシャンプー)やアタマジラミ専用の梳すき櫛を使います。ところが、このピレスロイド系薬剤が効かないアタマジラミが日本で増えてきています。沖縄では特にこの傾向が強く、すでに97%のアタマジラミがピレスロイド抵抗性になっています。沖縄でピレスロイド抵抗性アタマジラミがなぜここまでまん延してしまったのか、その原因はわかっていません。


 ピレスロイド抵抗性のアタマジラミはどのように治療すれば良いのでしょうか。これまでは、アタマジラミ専用の梳き櫛でシラミ卵と虫を除去するしかありませんでした。髪を少量ずつ取りながら、丹念に頭髪全体を梳く作業を毎日繰り返します。アタマジラミは頭皮から6ミリ程の場所に卵を産み付けるため、頭皮に近い場所から梳くことも大切です。


 言うのは簡単ですが、1匹のメスのシラミは生涯に50‐100個の卵を産むため、梳き櫛だけでこれら全てを取り除くのは、とても手間と根気のいる作業です。梳き櫛は髪に絡まりやすく痛みを感じる子もいますし、長時間じっとしていなければならないことも子供にとっては大きな負担になります。


 海外ではピレスロイド抵抗性のアタマジラミにも効く駆虫剤が複数使用されており、その中の一つであるジメチコン製剤が、沖縄での臨床試験を経て日本でも承認されました。2021年8月から薬局で購入することができるようになり、沖縄の家庭が悩まされてきたアタマジラミ症もこれでやっと解決できるのではないかと期待しています。

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