離島医療のコロナ対策
菊池徹哉/沖縄県立南部医療センター・こども医療センター附属南大東診療所(2021年12月9日掲載)
感染者出ていない南大東島 島への出入り2週間ルール徹底 ~沖縄県医師会編
南大東島は人口約1300人と小規模離島の中でも島民が多く、老若男女幅広い世代が暮らしています。また、建設現場も多く、さまざまな業者の出入りが多い島でもあります。
私が2020年4月に赴任してから現在まで、島民に新型コロナウイルス感染者は出ておらず、みなさんの協力によって新型コロナから島を守ることができています。
島内では帰島(来島)して2週間の感染対策を徹底してきました。2週間ルールを記したチラシを作成して空港で配り、島内放送で周知しました。島の唯一の医療機関である診療所は医師1人、看護師1人だけで、検査も抗原検査しかできません。PCR検査は検体を輸送して、結果が出るまで数日かかる脆弱(ぜいじゃく)な体制で対応しています。
県の方針で離島医療の脆弱性を考慮し、新型コロナワクチン接種を優先していただきました。南大東島では優先順位をつけ、対象となるすべての島民が接種できるよう役場職員と保健師が調整を行ってくれました。
さらに南大東村が確保したワクチンに余りがあったため、住民票がない人たちも接種できる体制を整え906人の方が接種できました。現在では南大東島の人口の78%の方がワクチン接種を終えています。
新型コロナにおける集団免疫が人口の何%が接種することで獲得できるかは証明されていませんが、新型コロナより感染力の強い麻疹(はしか)に関しては集団の85~95%に免疫があれば広範囲な感染を阻止できると言われています。このことから考えると、南大東島では新型コロナに対する防御力がある程度上がったのではないかと思っています。
1年以上続いているゴールの見えないウイルスとの戦いに終止符を打てるのは、いかに多くの人がワクチンを打てるかにかかっているのではないかと考えます。みなさんの地域で接種の機会がまだあれば、今からでも是非接種をして下さい。
沖縄をはじめ全国の感染が収束し、元の日常が一刻も早く戻ってくることを願います。