コロナ時代における「がん」
安次嶺宏哉/沖縄協同病院内科(2021年12月7日WEB版掲載)
懸念される発見の遅れ 適切な受診・検診を ~沖縄県医師会編
2019年の終わりに出現した新型コロナウイルス(以下コロナ)の大流行で、世界中の医療がひっ迫状態に陥りました。コロナの感染力と致死率の高さから、各国の医療の在り方がコロナを中心としたものに変わらざるを得なかったといっても過言ではありません。沖縄県を含む日本でも医療のひっ迫は深刻で、感染のピーク時には大勢の方々が不要不急の外出を控え、ワクチン接種やマスク着用、3密の回避を心がけることで、少しでも早く感染が収束することを待ち望んでいました。
2021年11月現在、コロナの新規感染者数は減少を続けており、徐々に元の生活を取り戻しつつあります。しかし、コロナ感染の再拡大の懸念もあり、依然として大勢の人が恐怖を感じていると思います。
同様に致死率の高い病気として「がん」があります。がんは悪性腫瘍ともよばれ、「悪性」という名のとおり、ひとたび進行してしまうと完治する可能性は極めて低く、命を落としてしまう病気です。医学の歴史の中で、がんに対するあらゆる治療法が生まれてきましたが、人類はいまだに進行がんを克服できず、日本人の死亡率第1位に居座り続けています。
国立がん研究センターの集計によれば日本人の2人に1人ががんになり、男性では4人に1人が、女性では6人に1人ががんにより死亡すると報告されています。
がんから命を救う最も有効な方法は「予防」と「早期発見」です。そのための方法として定期的な検診が勧められており、元気なうちから健康への意識をもち、なんらかの異常を指摘された場合は適切な精密検査へ案内されます。
コロナ禍における過剰な病院受診控えや検診控えは、コロナ感染以外の疾患リスクを増加させる可能性があり、特にがんにおいては発見の遅れが余命の短縮につながってしまいます。
実際、コロナパンデミック時に新たに診断されたがん患者の数が平時と比べて減少したという報告があります。コロナ感染対策のため、人との接触や外出を控えた結果、がん検診を含む適切な受診数が減ったことが原因と考えられており、今後より進行した状態でがんと診断される患者の増加も懸念されます。
地域ごとでコロナの流行状況も異なることから、がん検診に関する画一的な指針を取り決めることは難しく、医療者・患者双方の悩みの種となっていますが、今後はできる限りコロナ感染再拡大を防ぐための適切な感染対策をとりながら、がん検診・がん診療も並行して行っていくことが求められています。
がんに対する検査や治療は決して不要不急ではありません。日常生活の中から感染対策を意識すると同時に、適切な受診・検診を受けていただくようお願いいたします。