沖縄における本当の危機とは?

西田康太郎/琉球大学整形外科(2021年8月12日掲載)

無関心が招く健康悪化 ~沖縄県医師会編


 新型コロナウイルスの勢いは衰える様子はなく、長期戦の様相です。コロナ禍が始まってから1年以上が経過し、私たちにも少々疲れが生じてきました。思うように外出や社会的な活動ができず、特にお年を召された方々は閉じこもりがちで、足腰の弱りが心配です。


 足腰が弱り、自由に移動しにくくなる状態をロコモティブシンドローム(通称ロコモ)と呼び、その程度によっては将来介護が必要になる前状態と言われており注意が必要です。


 沖縄県整形外科医会が行った調査では女性では40代、男性でも50代で4割にロコモが始まっているとの結果を得ており、人ごとでは決してありません。沖縄でのロコモの認知度は全国でも最低クラスで、県民の健康全般に対する関心の低さが心配されます。


 もう一つの問題は骨がもろくなり、少しのことでも骨折しやすくなる骨粗しょう症です。最近の報告では、骨粗しょう症に伴う太ももの付け根の骨折が、沖縄県が最多であることが判明しました。さらにメタボリック症候群(メタボ)も問題で、それに伴う肥満も沖縄は全国で最悪レベルにあります。


 1985年まで世界最高の健康長寿で知られ、多くの研究もなされた沖縄県は、その後わずか40年足らずで健康はおろか、特に男性の平均寿命は、国内でも下から数えた方が早い状態に凋落(ちょうらく)してしまいました。いずれも食生活の変化が主な原因であることは間違いありません。


 車社会が顕著で、あまり歩かないことも問題になってきました。近年の県の調査でも、その傾向が強まっていることが明らかになっています。そこに今回のコロナ禍です。今まで以上に出歩かず閉じこもりがちになると、運動不足に拍車がかかり、ロコモのみならず肥満やメタボの悪化も懸念されます。


 耳が痛い話かもしれませんが、県民の健康状態が本当に危機的な状況にあることから目を背けてはなりません。コロナよりも本当に怖いのは、健康に関する無関心とそれから生じた不摂生だと思います。

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