まさに黒電話からスマートフォンへの進化
橋本成司/南部徳洲会病院(2021年6月11日掲載)
最新のピンポイント放射線治療って? ~沖縄県医師会編
「放射線」で治療する、と聞くと「放射能の全身被ばく」を思い浮かべてしまいませんか?
でも、放射線はレーザービームやスポットライトのイメージがより正解です。がんのしこりを、身体の外から主にエックス線のビームで正確に狙い撃つのです。最も良い点は、治療中に何も感じないこと。影響はビームの当たった場所のみです。身体への負担が小さいため、年齢によらず、持病のある方の選択肢にもなり得ます。
がんは、徐々に大きくなり転移する性質があります。その段階に応じて完治や再発予防、痛みなど、つらい症状の改善を目指します。ビームの量や範囲はコンピューターで調整するため、近年の進歩は目を見張ります。県内には、しこりの動きも感知してロボットアームで全方向からピンポイント治療できる最新装置も導入されています。身近な物で例えると、まさに黒電話からスマートフォンへの進化です。
ピンポイント治療は早期のがんに限りません。再発したがんや、脳・リンパ節・肺・肝臓などの転移にも有効な場合があります。特に背骨の転移は、強い痛みや脊髄損傷からまひにつながることもあり、見つかった場合は早めに治療すると安心です。
ところが、県内の放射線治療の機会は先進国アメリカの半分程度にとどまることが、私たちグループの調査で分かりました。メリットが周知されていないのです。手術や抗がん剤治療を受ける方、がんの辛(つら)い症状をお持ちの方も、主治医の先生に「放射線治療の医師からも直接説明を受けたい」と相談してはどうでしょう。
県内の放射線治療科はすべて完全予約制です。デメリットも含め十分に納得して治療に臨んでいただくため、しっかり時間を確保して説明いたします。がんの種類や広がり、持病など身体の状態に応じ、科学的な根拠を基によく検討します。ちなみに放射線治療は保険適用です。
私たち放射線治療医は全身のあらゆるがんに精通する、がん治療の専門家です。ぜひ、前向きな気持ちでご相談下さい。