コロナ禍と乳がん
阿部典恵/中頭病院(2021年5月30日掲載)
検診は「自粛」しないで 生活の中で身体活動を高める工夫 ~沖縄県医師会編
新型コロナウイルスの影響を受けて、検診受診者の減少が問題となっています。日本対がん協会の報告によると、緊急事態宣言が発令された昨年4~5月は対前年同月比で8~9割減となり、その後、回復傾向ではあるものの、通年では3割ほど減少の傾向にあるようです。
皆さんご存じのように、がんは早期発見・早期治療が極めて大事です。乳がんはステージ1の段階で治療を受ければ90%以上は完治することができますが、発見・治療が遅れるに従って再発や転移のリスクが高くなり、完治することが難しくなることがあります。がんは自粛してくれません。
検診施設や県内医療機関では徹底した感染防止対策を行ってますので、昨年、検診を受け忘れてしまった方や、気になる症状があるけれどコロナが怖くて病院に行けなかったという方は今年はぜひ検診を受診してください。
また、コロナ禍での運動不足も問題です。私の外来に通院中の患者さんに「コロナが怖くて家にこもっている」と、体重が増えた方が多くなっています。肥満が乳がんのリスクを高めることは明らかで、現在、乳がん治療中または治療後の方は、肥満が再発のリスクを高めます。
一方、運動や身体活動を高く維持することで乳がんを予防し、再発のリスクを下げることができます。ある研究データではがん診断後に身体活動を高めることで死亡リスクを約40%減少させることがわかりました。
ランニングや筋トレなどの激しい運動ができるのであればそれに越したことはありませんがそこまでできなくても、日々の生活の中で、歩幅を大きくして早歩きする▽エレベーターではなく階段を使う▽歩いて買い物に行く▽遠くのトイレを使う▽テレビを見ながら筋トレ・ストレッチを行う-など、ほんの少し意識するだけで身体活動を高めることができます。
マスク着用、手洗い、うがいなどの感染予防をしながら検診を受け、日々活動的に過ごすよう意識しながら健康的にコロナ禍を乗り切っていきましょう。