「心不全パンデミック」と新型コロナ
山口怜/中頭病院(2021年5月29日掲載)
生活習慣病を悪化させないために ~沖縄県医師会編
心不全は、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。最近、日本や欧米で急激にふえており、心不全パンデミック(大流行)ともよばれます。
心不全は肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が主な原因ですが、高齢化も大きく関係します。動いたときに呼吸が荒くなったり、夜、横になったときに息苦しくなるのが初期症状で、徐々に症状が出現することもあれば、急激に症状が現れることもあります。
心不全になれば、専門的な診療が必要となり、治療は困難な場合がほとんどですので、心不全にならないことが大切です。そのためには、心不全の原因となる生活習慣病にならない、悪化させないことが重要です。
生活習慣病の予防と治療のためには、規則正しい食生活と運動習慣を心がけることが必要になります。
新型コロナウイルスの感染拡大にともなう自粛生活は、生活習慣病を悪化させる可能性があります。自粛生活では身体活動が減り、食事量が多くなりがちです。外来でも、多くの方の生活習慣病が悪化しており、「コロナ太り」「自粛太り」だと、コロナによる自粛生活を理由にしていることが少なくありません。
一方で生活習慣病の発症や悪化は、逆にコロナの重症化リスクとなることも分かってきました。
これらのことから、コロナの感染リスクを最小限にしながら、適度な運動や規則正しい生活習慣を心がけていく必要があるわけです。しかし、いざ、行動に移そうと思っても、明日、また明日と先延ばしにしてしまいがちです。
そこで、まず生活習慣の記録を始めてはいかがでしょうか。毎日の体重、血圧(可能なら起床後朝食前、就寝前に2回ずつ)、運動量(歩数や時間)、食事内容などです。スマートフォンは体重計と連動し、万歩計にもなるので、活用してもよいでしょう。初めは継続を意識して、無理のない範囲で始めることをお勧めします。