認知症に三つの予防
松浦雅人/嬉野が丘サマリヤ人病院(2021年3月25日掲載)
抱え込まずに悩み伝えて 社会的孤立の回避を ~沖縄県医師会編
認知症の「予防」とは、認知症にならないようにする(一次予防)ことだけでなく、認知症を早期に発見し早期に治療する(二次予防)、そして認知症になっても進行を遅らせる(三次予防)ことです。
認知症の一次予防についてはいまだ科学的根拠が十分とはいえないため、その効果を疑問視する声があります。しかし、高血圧や糖尿病などの血管危険因子を治療することで血管性認知症は半減し、健康志向の高まりとともにアルツハイマー型認知症の発症率も減少しているとの指摘があります。
英国の科学雑誌「ランセット」に掲載された最新のデータをみますと、認知症発症リスクのうち修正可能なものが従来の35%から40%に上方修正されました。
認知症の発症予防のためには中年期からの生活改善が必要で、とくに難聴、頭部外傷、高血圧、肥満、多量飲酒への対策が重要とされています。高齢期の生活改善については、喫煙、社会的孤立、抑うつ、運動不足、大気汚染、糖尿病への対策が重要とされ、とくに社会的孤立の比重が従来の2倍と大きく評価されました。
沖縄には「しー(借金)と、やんめー(病)は隠すな」という格言があるそうです。認知症ではないかと一人悩んで隠すことなく、また家族だけで抱え込んで隠すことなく、地域にオープンにして、社会的孤立を避けることが大切です。独居高齢者が増えていますが、地域とのコミュニケーションをとり続けることが認知症の予防になります。
2025年には認知症の人は700万人に達するといわれ、19年に「認知症施策推進大綱」が閣議決定されました。「共生」と「予防」を2本柱として25年までに達成すべき施策を推進するというものです。「共生」とは、認知症の人が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることをめざす社会づくりです。
認知症は誰もがなりうる病気なので、地域では認知症の人や家族の視点に立って多くのセーフティーネットを準備し、「共生」社会をつくることがそのまま認知症予防につながることになります。