喉が詰まる、胸が圧迫される、ムカムカする…
仲原靖夫/仲原漢方クリニック(2021年2月11日掲載)
コロナ後に増えた訴え ~沖縄県医師会編
新型コロナウイルス感染症の流行で、世の中の動きが大きく変化したことは皆さんが痛切に感じておられると思います。学校関連の行事の劇的変化を見ていても大変だろうなあと思われます。生徒や先生方も前例のない状況で学校生活をやりくりしなければならず、そのストレスは想像も及びません。
そんな状況の変化の中で喉が詰まる、胸が圧迫される、ムカムカするなどの症状を訴えて見える生徒や先生がたまにやって来ます。このような訴えはこれまで全然なかったわけではないのですが、ごくまれでした。ところが新型コロナ感染が起こって以降珍しくなくなりました。食事は普通にとれるし、水も飲めるのですが突然症状がおこり、不安になり困っているように見えます。
そのような症状を漢方では「梅核気(ばいかくき)」(梅干しの種がのどに引っかかった感じ)、あるいは「咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)」(あぶった肉がのどに引っかかっている感じ)と表現しています。消化管の気が滞った症状と考えて、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)という気の巡りをよくする薬を処方します。すると喉の詰まった感じが取れてくるのです。
なぜそのようなことが起こるのでしょうか。新型コロナ感染症で大きく変化した社会の変化の及ぼすストレスが体に作用して喉を詰まらせているのではないかと考えられます。現代医学的に説明するとストレスは交感神経の緊張を引き起こします。交感神経の緊張は副交感神経の働きを抑制します。副交感神経は消化管の運動をスムーズにする作用があるので、ストレスが強すぎると喉や食道の筋肉のスムーズな運動がおさえられてあのような症状になっていると考えられます。さらに動悸(どうき)や不安、ゲップや胸焼け、腹痛や下痢などを訴える場合もあります。
これらは言うまでもないことですが耳鼻科の診察で明らかな異常がないときの話です。またストレスの原因が新型コロナというこれまでにない出来事となると、心の不安をやわらげるような精神的なケアが併せて必要になることも考えられます。