白内障手術に新選択肢

松永次郎/松永眼科医院(2021年1月28日掲載)

保険適応の多焦点眼内レンズ ~沖縄県医師会編


 現在、広く行われている白内障手術では、濁った水晶体を超音波で除去し、水晶体のかわりになる眼内レンズを挿入します。


 眼内レンズには、焦点が一カ所の単焦点眼内レンズ(健康保険適応)と遠近両用の多焦点眼内レンズ(健康保険非適応)などがあります。多焦点眼内レンズでは、眼内レンズに回折格子という溝がある回折型多焦点眼内レンズが普及しています。回折型多焦点眼内レンズは、良好な近方視力を得ることができます。一方で、遠方の見え方で鮮明度が劣る、独特のまぶしさがある、健康保険適応がなく手術費用が高額になるなどの欠点もあります。


 近年、健康保険適応がある多焦点機能をもった分節眼内レンズが普及しつつあります。分節眼内レンズは眼内レンズの半円が遠方度数、半円が近方度数で形成されています。利点としては、遠方の鮮明度が高い、まぶしさが少ない、健康保険適応であり手術費用が高額にならないことがあげられます。欠点として、近方焦点の距離が眼前の70センチであるため、近方視力が回折型多焦点眼内レンズに比べ劣ります。


 分節眼内レンズは遠方視の鮮明度の劣化、まぶしさなどの欠点が少ないため、患者さんにすすめやすい眼内レンズです。患者さんには「白内障手術をします。眼内レンズは中間から遠方がなだらかに見えるレンズです」といった具合で説明しています。通常、白内障術後の見え方の不満は遠方視に起因するものが主で、近方視に起因する不満はごく一部です。これは、日常視の大半は遠方視で形成されている点に起因しています。


 遠方視とは自動車運転、歩行、会話、テレビの視聴など、近方視とは読書やパソコンの操作などをさし、実際に近方視が必要になる時間はあまり多くありません。そのため遠方視の欠点が少なく、近方もまあまあ見える分節眼内レンズは、患者さんに受け入れられやすい眼内レンズです。

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