認知症と間違えられやすい高齢者のてんかん

古謝淳/メンタルクリニックやんばる(2020年11月12日掲載)

正確な診断で症状改善 ~沖縄県医師会編


 てんかんは古くから知られている疾患のひとつで、聖書にも人々を苦しめたという記述もあります。てんかんの患者さんの数は人口千人あたり5~8人で、誰もがかかる可能性のある病気のひとつです。これまで小児期に発症しやすいと考えられていましたが、実は高齢者でも、小児と同じくらいかそれ以上に多いことが明らかになりました。65歳以上のてんかんの患者さんは、人口千人あたり10・3人という調査結果があり、40歳から64歳の3・6人と比べ約3倍です。


 てんかんは、脳の神経細胞に突然発生する激しい電気的な興奮により繰り返す「てんかん発作」を特徴とします。高齢者では、全身のけいれんに至らない、脳の一部分の発作のことが多く、ゆえにてんかんの症状と認識されないこともあります。「側頭葉」の発作が多く認められますが、その典型的な発作は以下の通りです。自動症(口をもぐもぐする、身ぶりをするなど)、動作の停止、自律神経症状(腹痛、嘔気(おうき)/嘔吐(おうと)、発汗、立毛、熱感/冷感、腹鳴(ふくめい)、心悸亢進(しんきこうしん)、胸部圧迫感など)、精神症状(未体験なのに過去に体験したような感覚、いつも体験していることが未体験のような感覚、昔の記憶が次々と浮かぶ、恐怖感など)、認知障害(記憶障害、言語障害)、発作後のもうろう状態。これらの症状が認知症の症状と間違えられることもあり、詳しく確認する必要があります。


 てんかんの診断には脳波検査が重要ですが、認知症との区別も必要です。また認知症にてんかんを合併しやすいなど、診断が難しい場合もあります。高齢者のてんかんは、正確に診断されれば治療への反応は良いことが多く、症状の改善が期待でき、さらに認知症への移行を予防できる可能性があります。一方てんかんと診断されることへの心理的な影響も考えられ、これらに配慮しながら診療を進めていく必要があります。もしてんかんを疑う状態がある場合、神経内科、脳神経外科、精神科などのてんかんを診療できる医療機関で相談してくださいませ。

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