かかりつけ医、患者をつぶさに観察し変化探す

清水健/しみず胃腸内科21(2020年5月15日掲載)

初診よりも情報蓄積 適切な治療導く ~沖縄県医師会編


 日々の診療で、医師「具合はどうですか?」、患者「変わりないです」、その後、聴診をして、医師「では薬を出しておきますね」という流れは、患者さんから見ると毎月変わらない作業の繰り返しに見えるかもしれません。でも、実はそうではないのです。


 医師は、患者さんを診察室に呼び入れる時から出ていくまでつぶさに観察し、歩き方や顔色はいつも通りか、変な咳(せき)、苦しい呼吸をしていないかなど、わずかな時間の間にちょっとした変化を探します。毎日顔を合わせる家族より、ひと月おきに見る医師の方が身体的な変化に気づきやすいこともあります。


 また過去のカルテを見て、定期的に通院して薬が切れていないか、飲酒喫煙の習慣はどうなっているか、採血検査や癌(がん)検診を受けているかなど、患者さんの情報を蓄積していきます。長い間通院していれば、家族背景、仕事や食生活の情報も集まります。


 そして毎月、変わりがなかった患者さんにも数年すると何かしら体の異常を感じる日がきます。その時、患者さんに「あの先生に相談しよう」と思ってもらえれば、かかりつけ医の本領が発揮される時です。その患者さんを初めて診る医師よりもかかりつけ医は多くの情報を引き出しの中に持っています。


 普段と違う患者さんの訴えを聞き、いつもと違う変化を発見し、病気を診断し適切な治療を行える病院へ導いてあげることができます。そして数カ月たってその患者さんから「先生、ありがとう。治療がうまくいって退院してきたよ」と言ってもらう瞬間、それがかかりつけ医として一番うれしい瞬間です。


 2018年の統計で日本の一般診療所数は1万2057施設あります。超高齢化社会に突入し、日常的に診療が必要な高齢者が増え、その診療の中でちょっとした変化に気づくかかりつけ医の必要性は今後さらに高まっていくと考えられます。かかりつけ医は何かあった時のいわば「転ばぬ先の杖(つえ)」です。ぜひ自分のかかりつけ医をつくっておいてください。

このページのトップへ