「こころ」の影響受け「からだ」に症状

城間直秀/発達神経クリニック プロップ(2020年3月28日掲載)

こどもの心身症 正しく理解を ~沖縄県医師会編

 心身症という名前をみなさまは聞いたことがありますか? 心身症とは、『体の病気(喘息(ぜんそく)や皮膚炎、胃腸炎など)だけどその病気の原因や経過に【こころ】の影響が強く認められるもの』を言います。代表的な病気としては、片頭痛や気管支喘息、過敏性腸症候群、夜尿症などが有名です。大人と比べ、こどもの場合は、さらに【こころ】と【からだ】の境界線があいまいで、【こころ】の影響を強く受けやすく、【からだ】に症状を出しやすいという特徴があります。運動会などの学校行事前にとても緊張して発熱することも心身症では認められます。


 思春期に多く、学校で問題になりやすいのが起立性低血圧です。起立性低血圧は起立性調節障害ともよばれ、起床時に血圧がしっかり上がらないため布団から起上がれなかったり、体のだるさや頭痛などを訴えたりします。


 血圧は起きてから徐々に上がってくるので、昼後から調子が良くなることから、周囲から怠けのように勘違いされやすい場合があります。正確な診断は血圧を測定しながら体位を変更して、血圧の反応を観察します。原因は自律神経の失調からくるものですが、この病気も心身症に含まれ、【こころ】の状態が症状に大きく影響します。決して『怠け』ではありませんが、『気持ち』で症状が大きく変わるため誤解されやすいのです。


 心身症の治療ですが、第一は『体の治療』が大切です。それと同時に【こころ】にもアプローチして、本人の抱えている悩みや思いを治療者と共有したり、治療者に代弁してもらったりして回復を目指します。


 起立性低血圧では、体への働きかけとして水分を多く摂取すること、塩分の適切な摂取、適度な運動が大切になります。血圧をあげるお薬を利用する場合もあります。【こころ】への働きかけも同時に行う必要があり、専門的ではなくとも気持ちを聞いてあげたり、起きられないつらさに共感するだけでも治療につながっていきます。


 保護者も学校関係者も正しく、心身症を理解していただければと願っています。

このページのトップへ