世界で十数億人救った抗生物質 乱用で耐性菌が増加
中山仁/中山内科(2020年3月6日掲載)
風邪やインフルエンザには不要 ~沖縄県医師会編
抗生物質というのはイギリスの細菌学者、フレミングが青カビから発見したペニシリンが始まりです。この発見によりフレミングは1945年のノーベル医学、生理学賞を授賞しています。
第2次大戦中、イギリス首相チャーチルは重症の肺炎で生死をあやぶまれましたが、製品化されたばかりのペニシリンが投与され、奇跡的に回復しました(面白い事にチャーチルは子供の頃、川で溺れ、近所の農民に助けられ、チャーチルの父、マールバラ公は、そのお礼に農民の息子の学資を全て支援しました。息子は細菌学者となったフレミングです。チャーチルはフレミング親子に2度、命を助けられたわけです)。
世界はペニシリンの効力に驚き、その後世界中で感染症に使用されました。ペニシリンとは別の抗生物質を次々と開発され、現在ではセフェム系、マクラロイド系、ニューキノロン系等、多種、多様な抗生物質が存在します。
抗生物質により命を救われ人は延べにしたら10数億人にもなるでしょう。
使いすぎで抗生物質が効かない細菌が増加
ところが、今日大きな問題が生じています。抗生物質に耐性を獲得した(抗生物質が効かない)細菌が増加しているのです。理由はいくつもあるでしょうが、一言でいえば乱用、使いすぎが大きな原因です。正しく使っても、耐性菌は生じたでしょうが、アメリカでは家畜の飼料に混ぜてどんどん投与していました。病気の予防目的でしたが、抗生物質投与に肥育効果があるといわれたのも拍車をかけたようです。
また医学そのものの進歩で重症患者、高齢者の延命、それ自体は喜ばしい事ですが、どうしても感染の機会が増えます。われわれ医者の処方しすぎもあったかと反省します。
今後、長く抗生物質の効果を維持し、後の世代の人々のためにも、その使用は抑制すべきでしょう。患者、御家族の皆さまにも御理解いただきたいと思います。風邪、インフルエンザに抗生物質は無効で不要です。