ウイルス検査を受けましたか? 国内300万人以上いる肝炎

玻座真博明/はざま胃腸内科クリニック(2020年2月15日掲載)

開発進む治療薬 ~沖縄県医師会編

 肝がんは、日本で5番目に死亡数が多いがんです。原因は一番がC型肝炎、次がB型肝炎でした。これらの肝炎はウイルスが感染して起こる病気で、国内に300万人以上いるといわれています。ウイルス感染と肝臓の炎症が持続すると慢性肝炎となり、一部は肝硬変や肝がんへ進行します。ウイルス肝炎は治療が難しい病気でしたが、薬の開発が進み治療成績が向上しています。


 C型慢性肝炎は、輸血や血液製剤による感染が主な原因でした。今では十分なチェック体制により、輸血が原因で感染することはほとんどありません。しかしその他のさまざまな原因により、新規の感染は毎年発生しています。


 C型肝炎にはワクチンはありません。以前の治療はインターフェロンという注射薬が中心で、副作用が多く治療効果も十分ではありませんでした。2014年から治療効果が高く副作用も少ない薬が次々と発売され、2~3カ月の飲み薬の治療で大部分のC型肝炎ウイルスを駆除できるようになりました。


 B型慢性肝炎は、出産時の母から子への感染が一番の原因でした。それに対して母子感染防止事業が始まり、出産時の感染は大幅に減少しました。しかし1990年代半ばから、欧米型のB型肝炎ウイルスが性交渉を感染経路として広がり、肝炎の新たな原因として問題になっています。


 現在B型肝炎ウイルスを駆除する薬はありませんが、ウイルスを強力に抑える飲み薬が発売されており、肝炎を抑え、肝がんの発症リスクを低下させます。また、2016年からは全出生児へのB型肝炎ワクチンの定期接種が始まりましたので、患者数は将来減少していくと思われます。


 このように肝炎ウイルス対策は近年大きく進歩していますが、自覚症状がないことも多いため、診断や治療を受けていない方がまだ多数いるといわれています。ウイルス肝炎と診断されながら病院を受診していない方は定期受診を、肝炎ウイルス検診を受けたことがない方は一度検診を、ぜひ受けましょう。

このページのトップへ