「たかが貧血」ではありません

田中新司/海邦病院(2019年11月15日掲載)

怖い病気が隠れていることも ~沖縄県医師会編

 貧血は、赤血球が減少し「血が薄くなった状態」をいいます。症状はさまざまで「めまいや息切れがする」ひどいものから、「疲れやすい」、「頭が痛い」といったこともあります。かなり悪化するまで自覚症状が乏しく、「仕事が忙しいから」、「ストレスが多いから」、「年のせい」と思い込んで放置され、検診などで偶然見つかることも多くあります。立ちくらみや回転性のめまいは貧血とは原因が異なることが多いです。


 最も多いのが鉄欠乏性貧血で、特に思春期の男女や思春期以後の女性で多く見られます。成長期の子供は鉄が多く必要で、スポーツによっても鉄が失われます。また女性では月経による出血・妊娠・出産により鉄が不足します。このように鉄欠乏性貧血は若い女性にとっては「ありふれた病気」ですが、時に子宮筋腫による月経過多、胃潰瘍、胃癌(がん)、大腸癌などによる出血が原因のことがあります。特に貧血がなかなか治らない時や、すぐに再発する場合、また男性や閉経後の女性の貧血は精密検査を受ける必要があります。


 治療は主に鉄剤の内服薬ですが、むかつき等で服用が困難な場合や病状によっては注射剤を用います。予防として鉄を多く含む食品(ひじき、小松菜、赤身の肉、魚など)の摂取を心掛けてください、サプリメントを利用するのもいいでしょう。


 鉄欠乏性貧血以外の貧血には、妊娠・寄生虫・胃切除・アルコール多飲等によりビタミンB-12や葉酸が不足して起こる巨赤芽球性貧血、免疫の異常などによる溶血性貧血、骨髄の働きが低下して起こる再生不良性貧血や各種の白血病などがあります。膠原(こうげん)病や他の慢性の病気により二次的に起こる貧血、薬剤の副作用による貧血もあります。


 このように貧血には怖い病気が隠れていることがあります、たかが貧血とあなどらないで医療機関を受診し、しっかり検査と治療を受けて下さい。鉄欠乏性貧血以外の貧血では専門医の受診をお勧めします。

このページのトップへ