人気芸能人を襲った舌がん

鈴木幹男/琉球大学医学部付属病院(2019年10月18日掲載)

口や喉に発生する「がん」 家庭でできる予防法 ~沖縄県医師会編

 みなさん、頭頸(とうけい)部がんについて聞いたことがありますか?


 先日、人気芸能人が舌がんになり、闘病の様子が大きく報道されました。これを見た多くの方が舌がんを心配して医療機関を受診されています。頭頸部とは頸、口、のど、鼻、顔面のことで、舌がん、口腔(こうくう)がん、咽頭がん、喉頭がん、副鼻腔(ふくびくう)がん、などが頭頸部がんに含まれています。


 頭頸部がんの80%は喫煙や過度の飲酒により生じることがわかっています。これ以外に、むし歯や義歯で舌を傷つけること、子宮頸(けい)がんと同じヒト乳頭腫ウイルスの感染、緑黄野菜が少ない偏った食事なども危険因子です。


 口やのどは生活の質につながるたくさんの役目を持っています。頭頸部がんになると、食事をする、味わう、においを嗅ぐ、息をする、会話をする、歌をうたう、などそれまで当たり前にできていたことができなくなってしまいます。


 頭頸部にはこのように多くの機能が集中しているため、頭頸部がん専門医を中心に放射線科医、腫瘍内科医が協力して治療を行っています。進行すると大きな手術が必要となり患者さんの身体的な負担が増します。


 それではどうしたらよいでしょうか? 先に書きました危険因子を避けることが大切な予防法です。その中で最も大事なことは、喫煙しないこと、過度の飲酒を避け、バランスのよい食事をすることです。またむし歯や合わない義歯は早めに治療してもらいましょう。


 もう一つ重要なことは早期発見です。早期頭頸部がんは症状が軽く、全く気づかないこともあります。近年経鼻内視鏡による食道胃カメラ検診が普及しており、症状がない早期頭頸部がんが見つかるようになってきています。


 頭頸部がんは早期であれば、体への負担が少ない治療を行えるため、通常の生活へ復帰できる方が増えてきています。


 沖縄では、お酒が好きになりやすい遺伝子を持つ方が多いことがわかっています。何事も過ぎたるは及ばざるがごとしです。お酒はほどほどに楽しみましょう。

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