意外と多い直腸脱

仕垣幸太郎/大浜第一病院(2019年10月11日掲載)

肛門から飛び出す腸を固定する二つの手術法 ~沖縄県医師会編

 年齢とともに肛門からピンポン球のようなものが触れるようになり、よく見ると肛門から腸が飛び出していたという方はおられませんか?


 子宮、膀胱(ぼうこう)、直腸などの骨盤の中にある臓器は通常靱帯(じんたい)や膜で支えられています。しかし加齢、多産、肥満による腹圧、子宮全摘出術後などの原因でこれらが弱くなることで骨盤内の臓器が膣や肛門から脱出してきます。この状態を「骨盤臓器脱」と呼びます。その中でも直腸脱は直腸を支える組織は弱くなることで直腸が肛門から脱出してくる病気です。


 粘膜が外に顔を出しているため常に粘膜から出る分泌液や粘液で湿っています。歩いていても、トイレでも脱出してしまうのでその都度自分で押し込んで元に戻さなければなりません。また、直腸はもともと便をためて排出する働きがあることから、直腸脱になることで腸が飛び出すという症状以外に便秘や便失禁(便漏れ)を伴うこともしばしば見られます。直腸脱はいぼ痔(じ)(痔核)と区別がつきにくい場合もあります。


 直腸脱は薬では治らないため手術が必要になります。手術の方法は、(1)肛門から治療する方法(経肛門手術)と(2)おなかから治療する方法(経腹手術)の二つに分けられます。経肛門手術は伸びきった直腸の壁を切らずに縮めるという方法です。


 最近では経腹手術は、腹腔(ふくくう)鏡下直腸固定術という方法で行います。これは、直腸が下垂し肛門から脱出するため、これを防ぐためにおなかから腹腔鏡という装置を使って、骨盤の下に落ち込んだ直腸を仙骨の骨膜に固定し落ちないようにする手術です。腹腔鏡手術はおなかに小さなキズしか作らないため、術後は傷の痛みが少ない、キズが目立ちにくいという利点があります。


 直腸脱はその症状により毎日の生活は不自由となり生活の質が著しく低下することがあります。専門医に診断してもらい適切な治療を受けることが大切です。

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