放射線医療の提供環境整う

有賀拓郎・琉球大学医学部付属病院(2019年9月21日掲載)

がん治療の選択肢増える ~沖縄県医師会編

 がんの治療を受ける(もしくは受けた)際に、自分の治療に関して放射線治療の選択肢があるかどうかのお話を聞いた方はどれくらいいますか? 沖縄県は他府県と比較して放射線治療の実施率が低いことが分かっています。他府県ではがんになった方の約3割が放射線治療を受けますが、沖縄県は2割程度にとどまっています。


 では、沖縄県の放射線治療を提供する環境はどうでしょうか? 少し前まで沖縄は医師、機械とも他府県に後れをとっていると言われていました。しかし現在では、放射線治療専門医もしくはこれから放射線治療専門医になるために日々臨床に励んでいる医師の数が、他府県と比較して遜色ない人数になりました。また放射線治療装置も国内で取り扱いのある主要メーカーの最新機種が全社そろっており、粒子線などの特殊な治療を除けば、こちらも他府県にまったく劣らない状況になっています。一方放射線治療の施設や常勤医は本島中南部に偏在しており、これは今後改善していく余地があると考えております。ただし、われわれ放射線治療医もまったく対策をしていないわけではありません。県立病院系の放射線治療医を中心に、離島を含む放射線治療の装置が無い病院で治療の相談のための外来を開設したり、病院間の連携室を通して患者さんの情報を共有し、相談ができるように努力しています。


 昔とは違い、がんに関する知識を得ることが容易になってきています。インターネットには玉石混交の情報が散らばっていますが、各がんの専門家が集まって作成する診療ガイドラインはわれわれ医師も大いに参考にしており、最近では各学会のホームページなどで無料公開されることが多くなってきました。ぜひ一度調べて、主治医の先生と共有しながら、ご自分もしくはご家族の治療方針を考えてみてください。がんの完治を目指す初期治療から、痛みなど不快な症状を緩和する治療まで、いろいろな場面で放射線治療の適応があります。


 自分やご家族のためにも、しっかり考えながらがん治療を組み立てていきましょう!

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