糖尿病のインスリン治療
湧上民雄・沖縄メディカル病院(2019年9月6日掲載)
低血糖の予防がカギ 測定器で血糖管理 ~沖縄県医師会編
糖尿病の薬物療法はインスリンから始まりました。1992年にこれまで治療することができなかった1型糖尿病の患者(体内でインスリンを作ることがほとんどできない特殊な糖尿病)を初めて救うことができるようになったのです。その後、多くの内服するタイプの糖尿病治療薬が開発されましたが、インスリンに代わるものではありません。
1型糖尿病だけでなく、他の糖尿病治療薬で血糖のコントロールが困難な患者さんにはインスリンが必要となります。インスリンの血糖を下げる力は強力ですが、その反面、低血糖という重大な副作用が避けられません。インスリン治療の歴史は、いかに低血糖を起こさずに血糖を安定させていくかということに尽きると思われます。
インスリン療法では、良好な血糖コントロールの指標であるHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)を7%以下に保つのはなかなか難しいのが現状です。たくさんの種類のインスリンの開発や注射器、針などの工夫にもかかわらず、インスリン療法を行えば必ず低血糖を経験します。低血糖は血糖コントロールの最大の障壁となっております。また、低血糖に対する恐怖感が患者の日々の生活の質を低下させていることも見逃せません。
低血糖を予防し血糖をコントロールするためには、患者自身で日々の血糖を測定する必要があります。1970年代から患者自身による血糖測定が始まりました。当初は弁当箱ほどの測定器で保険適応でもありませんでしたが、その後保険適応となり測定器も小型化され大変便利になりました。
従来の血糖測定器では最大でも1日4回程度しか血糖を測定できず、食後血糖の評価や低血糖の予測が不十分でした。その後、皮下にセンサーを穿刺(せんし)し持続的に血糖測定する機器が導入されました。
機器の精度の問題や穿刺部の皮膚のかぶれなど改良されるべき点も多いのですが、この機器が今後のインスリン治療を行う患者にとって不可欠なものとなるものと思います。