不眠症の治療
名嘉村博・名嘉村クリニック(2019年8月9日掲載)
神経質にならずゆっくり ~沖縄県医師会編
不眠だけでなくそのために日中に眠気、倦怠(けんたい)感、イライラ、怒りっぽくなり仕事、日常 生活や社会生活に悪影響を及ぼすようになると不眠症と診断されます。不眠が週3回以上3カ月以内は急性、3カ月以上続くと慢性不眠症とされています。
不眠症の治療は睡眠薬だけと思われがちですが薬の処方の前に考慮することがあります。安定剤や睡眠薬などを服用したことのない急性不眠症では、まず夜間の照明、冷房、寝る場所などの睡眠環境、睡眠中の家族のドアの開け閉めやトイレの音など生活雑音などに問題があれば対処します。
次に就床時間、起床時間が適切か判断します。不眠の人は午後11時か12時とできるだけ遅く寝ること、起床時間をできるだけ一定にし、朝の光を浴びることを勧めます。夜の睡眠に悪影響を与えないために昼寝は20分程度以下にするように努めます。
夜間のコーヒーや就寝前の激しい運動も避けます。関節痛、腹痛など痛みを伴う病気や夜間頻尿、糖尿病、高血圧などの慢性疾患も不眠を起こすので適切に診断治療されているか判断します。いびきなどの睡眠時無呼吸症候群、足のピクつき・こむら返りなどむずむず脚症候群といった他の睡眠障害やうつ病、統合失調症などの精神科疾患を併発していないか調べます。併発疾患があればその治療を優先します。薬物療法の前に可能なら認知行動療法を実施します。一時的な悩みやストレスによる急性不眠では止めることを前提に睡眠薬を開始します。ベンゾジアゼピン系は依存性を考慮してできるだけ避けるようにします。
効きすぎる薬は以後の治療に難渋するので最初は効果が緩和で依存性の少ないメラトニン増強剤やオレキシン抑制薬などから開始します。慢性不眠症ですでにベンゾジアゼピン系睡眠薬や安定剤を服用している場合は急に止めることをせず医師と相談しつつ再度睡眠衛生指導、認知行動療法を行い抗うつ剤などに変更して減量を試みます。神経質にならずゆっくりとするという心構えが大切です。